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「えー、それ、完全に避けられてるじゃないっすか」
バイト上がり、二つ隣のロッカーで仕事着を脱ぎながら魁斗が発した言葉に、ネクタイを緩める手が止まった。
「つか、シンプルに感じ悪いっすね、そのチン毛散らしくん。普通考えて、女の子から『抱きにきて』なんてお誘いがあれば、男なら迷わずそっちを優先するでしょ。そんなことでいちいち機嫌損ねるとか、童貞拗らせすぎてんじゃないっすか?」
「あー、いや……」
魁斗が言う『女の子』とはエヴァンのことで、『チン毛散らしくん』とは、いうまでもなく結月のことを指している。以前、床に陰毛が落ちていたことを話して以降ちょくちょくそのことをネタにされ、最近では一緒に片付けをしたり、アニメを見る仲にまでなっているということはすでに伝えてあった。
そしてまた今日、思い出したように例のルームメイトとはどんな感じなんすかと訊かれ、先日あったことを伝えるなり返ってきたのが今しがたの反応だ。
エヴァンを近くのマンションに住む女の子と偽って説明したのは、単に突っ込んで聞かれるのが面倒だったからである。エヴァンとはただ体の相性がよいから寝ているだけであり、その事実一つで、まだしばらく働くであろうバイト先の後輩にゲイだと認定されたのではいろいろと不都合が生じかねない。
さておき、問題なのはエヴァンではなく、チン毛散らしくん――否、結月のほうだ。薄々そうだろうなと思ってはいたけれど、やはり、自分は結月に避けられているらしい。第三者にきっぱりと言い切られて、確信した。
ただ一つ、引っかかる点があるとすれば……。
――あいつって、童貞だったのか……?
「これだから、童貞は嫌なんすよね。そうやって、すぐイケメンに嫉妬する。ま、御子柴先輩はそういうの慣れっこでしょうけど」
「や、別にそんなことは……」
「ないけど、まで言い切らないところが憎らしいっす!」
前に話したとき、結月は彼女がいないと言っていたのは覚えている。ただ、それが『生まれてこの方』という意味なのか、『今現在は』という意味だったのかまでは、あえて確認を取っていなかった。もし前者であるならば、結月が童貞である可能性は高い。少なくとも結月は、晃大のように付き合っていない相手とでも寝られるようなタイプではなさそうに見える。
いやしかし、仮に結月が童貞だったからといってなんだというのだ。魁斗の言う通り、それを理由に嫉妬して、機嫌を損ねているなんてことが本当にあるのだろうか。
電話の内容を聞いてしまったときの反応といい、一昨日、片付けに誘った際のぎこちない態度といい、結月にはなにか、もっと別の意味で距離を置かれているような気がしないでもない。
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