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鈴羽(すずは)……?」 「え、知ってる子?」  きょとんとした顔で訊かれ、ああいや……と晃大は答え淀んだ。  なんと説明すべきか、無言で言葉を探していると、察したように華蓮が首を縦に振る。 「あ〜、なるほど。つまり、あの子がその」 「え? いや、そんなんじゃ――」 「じゃあ、ワンナイトってこと?」 「いや、それも違うけど……」  そもそも、どうして本命かワンナイトかの二択なのか。  要領を得ない返事をする晃大に、華蓮はやれやれと肩を竦める。 「いーから、早く助けに行ってやんなさいよ。あの子、店入ってきたときからずっとあんたのことチラチラ見てたし」 「え、マジ?」 「マージ」  しっしと手で晃大を振り払い、華蓮は短いスカートを翻してカウンターの方へと去ってしまった。もう一度振り返ったとき、細い腕を掴んで引っ張ろうとする男の姿が目に入り、晃大はすぐさまそちらへと駆けつける。 「すみませーん。そちらのお客様、少し気分が悪そうなので確認いいですか?」  「ああ? またおまえかよ、クソだりぃな」  それはこっちの台詞だよ、クソダサ赤ジャージおやじ――。  と、抱いた感情はあくまでも胸の内で留めておく。以前にもカウンターでしつこく女の子に絡んでいた男だ。こういうのは病気みたいなものだから、一度や二度注意したからといって、そう簡単には治らない。 「お客様、よろしければ奥の休憩室をお貸しいたしますが……」  ひとまず男の存在は無視して、絡まれていた女性へと問いかける。目が合っておずおずと頷き返されて、インカム越しに女性スタッフを呼んだ。案内を任せ、ふたたび男と対峙する。  不満げにこちらを睨みつける男へとすっと微笑んで、晃大は言った。 「出禁です」 「は?」 「以前にも警告いたしましたので。どうぞ、速やかにご退場ください。次回からの入店は固くお断りさせていただきます」 「ふざっけん――」  振り上げられた手首を掴み、晃大は笑顔のままぐっと男に顔を寄せた。 「ほかのお客様にご迷惑です。――お帰りください」  低い声で繰り返し、ぎりぎり怪我はさせない程度の力を込める。 「っ――」  ばっと手を振り払い、男は逃げるようにその場を去っていった。その際に何人かの女性客にわざと肩をぶつけていたあたり、今後、あいつのホームグラウンドは駅にでも変わるのだろうか。  もういっそのこと、この店ではなく、この地球から出禁にしたほうがよかったまである。あんなのが送り込まれて来た日には、宇宙人ですら大迷惑だろうけれど。  ――て、いうか……。  振り返り、晃大は休憩室へと続く薄暗い廊下を見た。  一体なぜ、彼女がこの店に……。不安気にこちらを見上げる視線を思い出し、変なふうに胸がざわついた。

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