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(あれ? 晃大、なんでここにいんの? 鈴羽、ちょっと前に体育倉庫向かったはずだけど……)  放課後、ゴミ捨てを終えて教室に戻るなり、居合わせた美香に不思議そうに問われた。 (体育倉庫?) (晃大が呼んだんでしょ? カトちゃん先生に備品整理頼まれたから、手伝いに来てほしいって)  ね、菜摘(なつみ)? と、美香は一緒にいたクラスメイトに確認を取る。 (うん。晃大が鈴羽のこと呼んでるから伝えといてって、和真が……) (和真?)  美香が訊き返し、晃大はくっと眉を寄せた。  反応からして、美香はそれを、晃大直々の伝言だと思っていたらしい。おそらくは鈴羽もそうだろう。  しかし、晃大はそんなことを頼んだ覚えはない。だとすればなぜ、和真はそんな嘘をついたのか。  さわりと嫌な予感が胸を過り、晃大は教室を飛び出した。  廊下を走るなと注意する教員の声を無視して駆けつけた、人気のない体育倉庫。中から響いたガタンという物音に、勢いよく扉を開く。 (鈴羽っ――)   瞬間、晃大は息を呑んで硬直した。  たらりとぶら下がる胸元の赤いリボンだけを、今でも鮮明に覚えている。 「……あのときのこと、ずっと、謝りたかったの」 「え……?」  顔を上げると、いつの間にか二つのグラスがテーブルに置かれてあった。  謝る――。一体なにをだ。  未遂でこそあれ、あんなことが起こる前に止められなかった晃大にだって責任はある。どころか、和真の暴走に拍車をかけたのは自分だ。こちらが謝らなければならないことこそ数あれど、鈴羽に謝られるようなことをされた覚えは一つもない。  グラスに注がれた赤い液体を眺めながら、鈴羽はそっと口を開いた。 「晃大、私を助けるために和真と殴り合いになって、謹慎処分にまでなったのに……私、なんにも言えないまま転校することになっちゃって……」 「それは……」  それは、仕方ないだろう。あんなことが起きたあとで、一体どんな顔をして別れの挨拶なんてできるものか。鈴羽自身が言っていた通り、転校後もしばらくは、普通の生活に戻ることさえ難しかったはずだ。 「……私、あのとき晃大のことが好きだったの」  カランと、グラスの中の氷が音を立てて崩れた。膝の上で握り締めた拳に、ぐっと力がこもる。

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