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 午後の講義を終えるなり、連れからの誘いに断りを入れ、速やかに寮に帰宅した。  今はこの内から溢るるムラムラと下腹部の疼き、なによりも金玉を軽くすることが最優先だ。金玉が重いままでは、なにをやっても上手くいかない。  部屋に戻ると結月がベッドでスマホをいじっていたが、視線を合わせることなくクローゼットの前に立った。中からネイビーのTシャツとゆるっとしたスウェットパンツを取り出して、その場でさっと着替えを済ませる。またすぐに部屋を出て、さっき利用したばかりのエレベーターに乗り込んだ。  5と記されたボタンを押し、チンとベルが鳴って開いた扉をすり抜けて、まっすぐと廊下を突き進む。毎日シャワールームを利用しに足を運んでいる階ではあるが、本日の目的はその一つ奥にある巨大な施設、スポーツジムだった。  ――出して発散できないなら、運動しかないよな。  そもそも、出さなかった精液は自然と体内に再吸収されるため、射精は必須事項じゃない。だから金玉が重いなんてのも、ほぼ百パーセント思い込みだ。  わかっていても、重いものは重いのだから仕方ない。気が重いとか、頭が重いとか、そういうのと同じだ。気も頭も物理的に重量が増えるわけではないけれど、そう感じることは誰にだってある。金玉もその一つ――いや、二つだ。  さておき、わざわざこんなところに足を運んだのは、その『射精する』以外の方法で金玉の重みを解消するためだ。これが気持ちの問題であるならば、運動して汗でもかけば少しはスッキリするだろう。ネットで調べた情報でも、体を動かして性欲を発散というのは科学的な根拠があると記されてあった。  ジムと廊下を隔てる壁はガラスでできているため、それとなく中の様子を窺ってみる。ちらほらと筋トレに励んでいる寮生の姿が目に入った。  恐らく常連だろう。なにもしてない割にはそこそこ引き締まっている程度の晃大とは、また違った筋肉のつき方をしている。 「……てか」  呟いて、晃大は足を踏み入れた施設内をぐるりと見渡した。  ――どんだけ金かかってんだよ、ここ……。  寮長である一条自身が筋トレを趣味にしているという話は聞いたことがあるが、それにしてもすごい設備の整いようだ。見たこともないトレーニングマシンがあちこちにズラリと並んでいる。  ――あんま複雑そうなのは使いたくないな。  なにも、マッチョになりたくて来たわけではないし。いい感じに汗を流せればそれでいい。  逡巡の後、晃大は夜景の見える窓際に設置されたランニングマシンに歩み寄った。  すでに一人、黒いタンクトップ姿の男が走っている。たくさん空きがあるのにすぐ隣を使うのも気持ち悪いだろうと、あえて五つほど挟んだマシンを選んでスイッチを押した。  わずかに傾斜をつけ、軽いウォーキングから入る。体が温まってきた頃合いを見てスピードと傾斜を上げ、そこからは無心で走り続けた。  だんだんと汗が滲み、息が上がってくる。それと引き換えに、今日一日つきまとっていた下腹部の疼きがすうっと治まってゆく。  やはり、性欲の発散に運動を選んだのは正解だったらしい。じっとしていれば熱は溜まる一方だ。  こめかみを伝う汗を肩で拭おうとしたタイミングで、ふと、黒いタンクトップの男が視界に入った。晃大より先に来て走っていたようだが、あれからさらに二十分が経った今も休むことなく走り続けている。  ――しかも、スピードはっやいな……。

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