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よくあのペースで、これだけのあいだ走り続けられるものだ。元陸上部かなにかだろうか。
負けてられないなと思い、晃大もマシンを操作してベルトの回転速度を速めた。気持ち、タンクトップ男よりも速いくらいの設定で……。
なにも、対抗心があったわけではない。単に自分を高めるためにしたその操作だったが、ほどもなく、男のほうからもピッピとマシンを操作する音が聞こえてきた。気になって視線を向けてみると、なにやら、さきほどにも増して男の走るスピードが速くなっている。
――……は?
偶然、だろうか。それにしては、やけにあからさまなタイミングである。
五分ほど様子を窺った後、晃大はまたさり気なくマシンを操作して、ベルトのスピードを上げた。さきほど同様、男よりもほんの少し速い設定で……。
ピッピ、と。また男のほうからもマシンを操作する音が聞こえてくる。眉を寄せ、そちらを振り返ると、同じくこちらへと顔を向けた男と視線がかち合った。
滴る汗すら清々しく感じる黒髪に、すっきりと整ったスポーツマンらしい顔立ち。身長は晃大のほうが気持ち高そうではあるが、いっても、百八十弱は余裕であるように見受けられる。
男はペコリと頭を下げ、それからまたすぐに前を向いて走り出した。
嫌味のない態度。しかしやはり、マシンの設定は晃大よりも若干速め。フォームもまたやけに綺麗である。
「……」
晃大は無言でマシンを操作し、今度は男と同じくらいのスピードに設定した。
視界の隅、男がまたチラとこちらを振り向くのがわかったが、追い上げ合戦はここまでのようだ。同じスピードならよしと判断したらしく、もうマシンを操作する音は聞こえてこない。
ほっと一息――つきたいところだが、すでにマシンの設定はかなりのハードモード。ここからはもう完全に持久力勝負だった。
……いや、どこの誰ともわからない相手になにをムキになっているんだという話だが、男に生まれた以上、自分以外の男はもれなく全員ライバルだ。ここのところメンタルが下降気味だったのもあり、持ち直すなら、今ここで勝負に勝つしかないと思った。
こいつに勝ったら金玉が軽くなる。こいつに勝ったら金玉が軽くなる。こいつに勝ったら金玉が……。
念じながら走ること、どれくらい経っただろう。いよいよ、晃大の体力も限界だった。
横の男は、相変わらず綺麗なフォームで走り続けている。思えば、高校のときに退部して以降スポーツとは無縁の生活を送っていた自分と、あんな見るからにジム通いの男とが競い合って勝てるはずもなかったのだ。
性欲ならとっくに消沈している。だったらこれ以上、男に張り合って走り続けても時間の無駄だ。仮にここで一分や二分、晃大が男より長く走り続けられたところで金玉が軽くなるわけでもあるまいし。
――あー、やめやめ。
これ以上やると、却って金玉の皮が伸びかねない。晃大はただでさえ、人よりちんこと金玉がデカいのに。
いきなり停止するのはよくないだろうと、五分間ほどのウォーキングを経てマシンから降りた。どういうわけか男も揃ってマシンから降りようとしていることに若干の訝しさを覚えつつも、気にせずその場を立ち去ろうとする。
「御子柴先輩!」
思いがけず名を呼ばれ、ぴたりと足が止まった。
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