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 手早くシャワーを浴びて部屋に戻ると、入れ違いで結月が出ていくところだった。ぎこちなく視線を逸らし、そそくさとその場を去ろうとする結月へと、晃大はすかさず声をかける。 「これから飯?」  ぴくりと、結月の肩が跳ねた。そろそろとこちらを振り返ったかと思うと、警戒心の強い野良猫のような視線を向けられる。 「ちょうど俺も食堂行くところだったから。せっかくなら一緒に食おうぜ」  対して、こちらは意識して軽い態度を装った。それこそ、警戒して近づこうとしない野良猫に、そっと声をかけるように。 「……」  返事は聞こえない。だったらと、晃大は一方的に話を進めた。 「ほら、行くぞ」  一歩玄関の外に出て、ドアを開けたまま手で押さえる。ためらうような間があって、結月はようやく玄関から足を踏み出した。率先して施錠をし、並んでエレベーターへと向かう。 「今日のメニューなんだろな。運動したあとだから、腹減った」 「運動……?」  ようやく、結月が声を発した。  エレベーターはさっき晃大が使ったときから変わらず四階に止まっていて、待つことなく中に乗り込む。 「五階にジムあんじゃん? そこ行ってた」 「……へえ」  続く反応はない。明らかな壁を感じつつも、変わらない調子で晃大は続けた。 「そっちは最近どんな感じ?」 「へ……」 「テニスとか、体動かしたりしてんの?」  チンと、ベルが鳴ってエレベーターが停止する。食堂へと続く廊下をゆったりと歩きながら、時間差で「別に……」という返事が聞こえてきた。 「へえ」  こだわるふうもなく返したが、内心でほっとしている自分がいることが不思議だった。  あの大島とかいう男と再会したのをきっかけに、二人仲良くテニスに行くようになったのではと勘ぐっていたが、思い過ごしだったらしい。 「お、今日肉じゃがじゃん。めっちゃ美味そう」  久々のジュリオの料理なので、晃大はがっつりとおかずを皿によそう。結月も結月で、結構な量を盛り付けて皿をトレーに乗せた。 「あそこ座ろうぜ」   無言でついてきた結月と向かい合わせで席につき、いただきますと手を合わせる。  およそ一ヶ月ぶりの結月と一緒に摂る食事。温かく家庭的な肉じゃがの味と相まって、やけに懐かしい気分になる。 「――そういやさっき、ジムでおまえの友達に会ってさ」  タイミングを見計らい、なんてことない調子で晃大は切り出した。  ちまちまと肉じゃがをつついていた結月の動きが止まり、窺うような視線を向けられる。 「友達……?」 「大誠、つってたかな。運動神経よさそうで、パイパンじゃないほうの……」  いや、それは余計かと、晃大は途中で言葉を止める。 「パイパン……?」  繰り返し、結月は訝しげに眉を寄せた。 「悪い、それはどうでもいい。……そいつに急に話しかけられて、『すみませんでした』って頭下げられた」 「え……」  ふっと、結月の表情に不安が滲む。不穏な空気になりかけたのを察して、晃大はふと、結月の皿から人参を摘んで取り上げた。

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