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一歩外に足を踏み出すと、一気に空気が蒸し暑くなる。もうじき午後五時を迎えようという時刻にもかかわらず、真っ昼間のような日光が降り注ぐ広大なキャンパス。七月も中旬に入り、季節はすっかり夏模様だった。
門を抜け、転々と影を落とす街路樹のそばを歩きながら、晃大は一直線に駅を目指す。
二人にも説明した通り、本日は先約があるのだ。そいつに限っては、よそで少しでも不埒を働いたと気取るなり、あっけなくそっぽを向いてしまう。
そういう純粋そうな相手とは端から関わらないスタンスだったのだが、最近はそこに、ちょっとした心境の変化があった。不特定多数の女の子と一夜限りの愛を交わすより、ただひたすらにそいつからの信頼を得たい――。
不意に、ジリジリっというひずんだ音が耳元で響き、はっとして足を止めた。無遠慮に目の前を横切った丸っこい蝉が、逆光に照らされながら空高く飛んでいく姿を、数秒、ぽかんとその場で眺める。
ふっと我に返るなり、小さな苦笑が溢れた。けれどもそれは、ほとんど顰め面に近かったと思う。
なぜなら今、自分は、あのときのエヴァンと同じ状況に立たされているからだ。
日頃より金と引き換えに不特定多数の男と体を重ねるエヴァンが、晃大に抱かれながら声を押し殺して涙を流していたあの日――エヴァンらしくない、と晃大はそう思った。
自由奔放で自信に溢れ、百戦錬磨の実力を持つ魔性の男。そんなエヴァンが、たった一人、自分とは打って変わった地味で素朴なルームメイトに恋をしたばっかりに、ああもか弱くなってしまった。
そして案の定、そんならしくない片思いが実るはずもなく、相手から相部屋解消を突きつけられてしまったという。
――あいつ、今頃どうしてんのかな……。
エヴァンの現状は自分の未来を示しているようでもあり、とても他人事とは思えない。さきほどと比べやや重くなった足取りで、晃大はのろのろと駅へと続く道を歩いた。
さすがに晃大はエヴァンのように自暴自棄になったりはしないけれど、『らしくなさ』でいえば似たようなものだろう。たった一人の人間に感化され、自分の生き方そのものを見直そうとしている。らしくなさすぎて、笑ってしまう。
けれどもそれはやっぱり苦笑で、ほとんど顰め面に近かった。
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