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(俺は今まで、晃大を含めて三人の男とルームメイトになったことがあるけど……)
(うん)
なんか、過去に付き合ってきた男の話をしているようなテンションでジワるなと思いつつも、茶化すことなく晃大は相槌を打つ。
――俺は三番目の男か……。
(一人目のルームメイトは毎日のように小言を漏らして、酷いときには怒鳴りつけるみたいに部屋を片付けろって注意してきた。……で、それでも俺が言うこと聞かないからって、一条さんに苦情を入れて、三ヶ月もしないうちに部屋から出てった)
(三ヶ月……)
カップルの場合、一度目の倦怠期が訪れるタイミングだ。良くも悪くも相手の人間性というものが見えてきて、今までになかった『合う・合わない』、『続ける・続けない』の選択肢が浮かんでくる。
(二人目は半年くらい一緒にいて、一人目のやつみたいに注意してくることは一度もなかったけど……ある日、部屋に帰ったらそいつの荷物が全部なくなってて、知らない間にルームメイト解消されてた。……あとなんでか、出し散らかしてた俺のパンツが根こそぎ燃えるゴミに出されてた)
(ああ……)
それまで抑え込んできたぶん、一人目のルームメイトよりずっと鬱憤が溜まっていたのだろう。にしても、他人のパンツを捨ててよいとは思わないが。
(でも、晃大は……)
ピロンと、またポケットでスマホの通知音が鳴る。完全に無視して、晃大はじっと結月の言葉を待った。
(晃大だけは、一緒に片付けようって言ってくれたから……。だから、俺……)
俯いて、結月は黙り込む。
足元に置かれたごみ袋。畳みかけの洗濯物。大学で使うUSBをなくしたと泣きべそをかく結月に手を貸してやって以来、このままではこいつの将来は悲惨なことになると危惧して提案した『二人で片付け』。こうして結月の服を畳んでやるのも、これで何度目だろう。
片付けては散らかり、散らかっては片付けて。もちろん、呆れる気持ちもあるにはあったが、協力して一つのことを成し遂げるというのは、シンプルに楽しくもあった。
だからこそ大浴場で嫌われ術の話を聞いた際、あれもこれも全て独り善がりのお節介だったのかと打ちのめされていたわけだけれど……。
(そのティッシュって、オナニーに使ったやつ?)
すっと手元に視線を向けて問いかけると、途端に結月の目が大きく見開かれた。
(オ、オナ……っ、はっ⁉ 急になに言っ――)
ははっと笑い、晃大は膝に乗せたままだったズボンを型に沿って綺麗に畳む。
(続き、さっさと片付けようぜ。終わったら一緒にアニメ見るか)
何話からだったっけと呑気に問いかける晃大とは裏腹に、結月は金魚のように頬を赤く染め上げてぱくぱくと口を開閉している。……嫌われ術と称して部屋に陰毛を毟り撒く人間が、この程度の下ネタでそんなに恥じらうことあるだろうか。
(セッ、セクハラすんなっ! このっ!)
思いがけず手に持っていたティッシュを投げつけられ、うわっと晃大は身を反らした。
(ばっ、どっちがセクハラだよ! 人にシコティッシュ投げんな!)
(シコティッシュじゃない!)
そのあとは落ちているティッシュを見つけるたびに「おりゃ」とか「このっ」とか言いながら結月がそれを投げつけてきて、今までで一番、片付けに時間がかかったことを覚えている。
ともあれ、その日を境に、晃大はまた以前のように気兼ねなく結月と話したり、食堂に行ったりできるようになったのだった。
今日も今日とて、結月はせっせとシコティッシュを拾っている。せっせ、セッセと……。
――ん?
「そういやエヴァンのやつ、剱崎さんとうまくやってんのかな」
ふと口にした疑問に、結月が「え?」と動きを止めた。
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