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「あいつ、ルームメイトに逃げられて、今剱崎さんと相部屋なんだろ? 大誠と郁人……だかが話してたけど」  結月は郁人と同じ大学に通っているみたいだし、エヴァンと朔実とも同学年なので、そのへんの情勢は晃大よりも把握していそうだ。それ以前に、晃大がこの寮での出来事に疎すぎるというのもあるけれど。 「いつの話してるんだ? 朔実なら、もうとっくにエヴァンの部屋に戻ってきてるけど……」 「え?」  驚きに目を瞬いた。 「……たしか、先月の終わりくらい。朔実のほうから剱崎さんにお願いしたって」  「朔実のほうから?」 「うん……」  頷き返され、二重で驚きが込み上げた。  予想外の展開にすぐにはリアクションが取れず、しばし、ぽかんとした表情のまま瞬きをする。 「……マジか。そんなこともあるんだな」  ようやく口にできた感想は、我ながら中身が空っぽで驚いた。仕方ないだろう。感想よりも、今は疑問のほうが大きい。  またしばらく黙り込んだ後、はっとして晃大は結月の顔を見た。 「え、てことはつまり、あの二人ってもう、そういう?」  エヴァンの気持ちを知ったうえで相部屋を再開したというのなら、そうとしか考えられないのだが。あの見るからに初心そうな男とエヴァンがそういう仲になるだなんて、にわかに信じ難い。   ――あいつ、エヴァンのこと抱けるのか……? 「そ、そんなの俺が知るかっ! 大体、エヴァンのことなら晃大のほうがよっぽど……」  なにやら口ごもったかと思えば、結月は唇を尖らせて視線を逸らした。 「あー……結月? そのことだけど、俺……」  言いかけたとき、結月のベッドに置かれていたスマホの着信が鳴った。  ビクリと結月の肩が跳ね、晃大は眉を顰める。 「誰?」 「え、と……」  スマホの画面を確認して、結月の表情が見てわかるほどに曇った。 「またあいつか。もう着拒しとけよ」 「そ、れはさすがに……」  言いつつも、電話に出ようとはしない。優柔不断な態度に、見ているこちらがもどかしくなる。  電話の相手は大島だ。ここのところ、二人で夕食を摂っているときやアニメを見ているときにも頻繁にかかってくるので、確認を取るまでもない。  以前、単刀直入にストーカーなのかと尋ねた際、結月は言葉を濁していたけれど、おそらくそうと見て間違いないだろう。あの男はストーカーだ。高校時代の部活の後輩にこうもしつこく絡んでくるなんて普通じゃない。 「スマホ、貸せよ。俺が出てやる」  立ち上がり、晃大は腕を伸ばした。 「い、いいってそんなの……っ。さすがに、悪いし……」 「どっちに?」  晃大にか。大島にか。前者ならすぐに答えられるだろうが、結月は俯いて黙り込んだ。  イライラする。大部分は大島への苛立ちだが、そんな大島に対し、はっきりした態度を示さない結月にも。  なぜ被害に遭っている立場にもかかわらず、加害者を庇おうとするのだろう。問い詰めたい。問い詰めて、それは間違ったことなのだと気づかせてやりたい。  けれど、それがさらに結月を追い詰める形になったのでは元も子もない。結月には結月の事情があって、身動きが取れずにいる可能性だってあるのだ。  下手に突き放して、状況が悪化することを恐れているのか。自分が被害者であるという事実を受け入れたくないのか。それともまさか……。 「おまえ、あの男のこと好きなの?」

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