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二週間ほど前からまた結月と例のアニメ鑑賞を再開し、気づけば二百話以上あるエピソードの四分の一を見終えていた。主人公がテニスボールと間違えて部長の金玉を握ってしまったところでエンディング曲が流れ始め、晃大はふと、壁に掛けてあった時計を確認する。
「もうぼちぼち十時か。結月、おまえ風呂は?」
そう言う晃大は、ちょうど大学から帰ってくるタイミングで激しい豪雨に見舞われて、寮に着くなりシャワーを済ませていた。その後、恒例の片付けを一緒にして、夕食を摂り、アニメを見始めて早三時間ほど。明日は土曜日で二人とも大学は休みだし、晃大のバイトも夜九時からなので夜更かし自体は問題ないのだけれど、あと一時間もすれば大浴場は閉まってしまう。
「あー、俺シャワー派だから、別に時間は大丈夫だけど……」
「ここのシャワールーム、十時回ったら出るらしいぞ」
「は? 出るってなにが……」
「妖怪金玉潰し」
途端に、強張っていた結月の表情がむくれっ面に変わった。
「けっ。出るわけないだろ、そんなアホみたいな妖怪」
「いや、マジだって。タマタマ……タマタマ……ってボヤきながらドアの前までやってきて――」
「あっそ。とりあえず俺、シャワー浴びてくるから」
釣れない反応に、晃大はひょいと肩を竦めた。事実、少し前まではこの部屋にも妖怪チン毛散らしがいたのだが。
「パンツ忘れずに持ってけよー」
「言われなくても持ってくし!」
今日、晃大が畳んでやったばかりの着替えセットを手に、ふと結月の動きが止まった。
「ん?」
「……続き」
背中を向けたまま、ぽそりと結月が呟く。
「一人で勝手に見るなよ」
言い置いてすたすたと玄関の方に歩いてゆく後ろ姿に、ふっと笑みが零れた。
「金玉、取られないように気をつけろよー」
「ふんっ! 取れるもんなら取ってみやがれっ」
強気な声とともに、バンッと扉を閉じる音がする。
「気性荒いな」
苦笑いして独りごちながら、晃大はごろんとベッドに寝転がった。
仰向けでぼうっと天井を眺めること数秒、無意識で口角が上がってくる。
「……マジ、可愛いすぎんだろ」
抑えきれない感情を漏らし、参ったとばかりに片腕で目元を覆い隠した。
自分でもどうかと思うのだが、あのウリウリした態度がすっかり癖になってしまっている。好みの綺麗なお姉さん系とはなにもかも違っているにもかかわらず、不思議と心を擽られる。
――大島といるときは、あんなんじゃなかったよな……。
なんというか、もっと素直な後輩感があった気がする。一方で晃大と接するときの結月ときたら、それはそれは、生意気な弟みたいな感じだ。いやしかし、捉えようによっては後者のほうが打ち解けている証拠といえないこともないこともないないアルカ?
「……はぁ」
ため息をついて、晃大は瞼を覆っていた腕を下ろした。高い天井までの距離に比例して、すうっと気持ちが沈んでゆくのを感じる。
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