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結月には、もう大島とは連絡を取らないように言ってあった。あまりきっぱりとした態度を取って逆上されても怖いので、やんわりと「ここのところ忙しくしている」というメッセージを送らせて、あとは未読スルーでいいと伝えてある。
ネットで対策を調べてみたところ、ストーカー相手に着信拒否やブロックという手段を取るのは逆効果らしい。余計に相手の執着心を煽るうえ、ブロックしている間にどんなメッセージが送られてきているのか知る由もないというのはリスクでしかない。極端な話、「今度無視したら殺しにいく」なんてメッセージを見落としてしまった日には、防げたかもしれない事件にまで発展してしまう可能性がある。
晃大自身、大島がそこまでイカれたやつだとはさすがに思っていないし、実際にそのような連絡は来ていないと結月も言っているけれど、未だ数日置きに電話がかかってきているのは事実だ。つい数日前には、頼むから会って話がしたいと懇願する長文のメッセージが届いていたという。
会ってなにを話すんだと訊きたいところではあるのだが、おおむね大島の目的なんてわかりきっている。というのも、例のレンタルテニスコートで再開して以降、改めて二人で食事に行った際、大島は面と向かって言ってきたのだそうだ。
あのときは突然告ったりして悪かった。俺と付き合いたくなくてわざと試合に負けたのかと思うとショックで、その後、冷たい態度を取ってしまったことを後悔している。俺はまだ結月への未練が捨てきれていない。だからまた会えて嬉しかった。今さらと思うかもしれないけど、また前みたいにおまえと仲良くしたい。それで少しずつでもいいから、俺のことをそういう意味で意識してほしい――。
一連の出来事を訥々と打ち明けてきた結月の、向けられた一途さにどう応えてよいのか戸惑っているような表情を思い出すたびに、胸の奥が焦げるような感覚に苛まれる。
大島の言い分が、全て都合のいい言い訳のように聞こえるのは晃大の性格が悪いからだろうか。
大島は本気で当時のことを後悔して、謝っているのかもしれない。そのうえでまだ結月への未練が捨てきれず、振り向いてもらおうと必死なのかもしれない。
でもだったら。第一に、なぜ体育倉庫のような逃げ場のない状況で結月に告白した? 絶対に勝つしかない引退試合の前に、そのような重大な選択を迫った? 試合に負け、責められている結月を庇おうとしなかった? 部活を辞めざるを得ない状況にまで追い込まれた結月を無視し続けられた?
それらは本当に、未熟だったからという理由で済ませられる話なのだろうか。そもそもあの大島という男が、好きな人のためになにかをしたいという気持ちよりも、好きな人を思い通りに動かしたいという気持ちのほうが強い人間だったから、そういう言動になったんじゃないのか。自分の非を詫びる際、いちいち「ショックだったから」などと前置きして同情を誘っているあたりが、まず気に食わないのだ。
結月をレギュラーに引き込んでペアを組んだのだって、下心がなかったとも言い切れない。それから毎日のように部活後に二人で練習していたというのだって……。
「あー」
ふと我に返って、晃大は頭を抱えた。
最低だ。これでは、結月のテニスの実力さえ疑っているようなものである。
晃大自身、ストレートに外見を褒められることに悪い気はせずとも、それ以外の要素もひっくるめて「どうせ顔だけ」で済まされることには常々辟易としている。なにしろ、そういうやつに限って中身も外見もしょうもない人間ばかりだからである。
――俺、実は昌暉のことめっちゃ嫌いじゃね……?
まあどうでもいいけど、と晃大は寝返りを打って体を横に向ける。反対側の壁に設置された空っぽのベッドを見つめるなり、ふと下腹部のあたりが変なふうに疼いた。
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