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「ばかっ、なにやってっ――」
慌てて追いついた晃大が肩に手を置くと、ビクリと華奢な背中が跳ねる。反動だろうか、そのまま仰向けに転がったかと思うと、結月は全力で手足をバタつかせ始めた。
「うわぁああ! 来るな! 触るな! あっち行け!」
「ちょ、おまっ――」
ちんこも金玉も丸出しで、なんて格好をしているのか。
晃大は慌てて常備灯を置き、転がる結月へと腕を伸ばす。言うまでもなく結月を起こすためだったが、金玉を潰されると思い込んでいる結月は、そうそう大人しく抱き起されてはくれなかった。
空中でチャリを漕ぐみたいに回転する足に股間を蹴られるわ、犬かきでもしているかのごとく振り乱される手に頬を引っ掻かれるわで、一方的にダメージが蓄積されていく。
「お、落ち着け……っ! 落ち着けって結月! 俺だ! 晃大だよ!」
「信じるもんかっ! このっ! このっ! なにが金だっ! なにが玉だっ! こんなのっ、ただの皺袋だろ! 取ってなんになるんだ変態! ケダモノ! あっち行けっ!」
気性の荒さとは裏腹に、ぎゅっと目を瞑って抵抗する結月の頬にはぼろぼろと涙が伝っていた。今さらながらその事実に気がついた晃大は、はっと息を呑んで動きを止める。
「結月……」
呟いた直後、唐突にぱっと視界が明るくなった。
「あ、復旧した」
声に反応して背後を振り返ると、いつの間にか廊下の壁に凭れかかり、こちらの様子を窺っていた一条と目が合う。
「っ、一条さん……っ」
焦ってふたたび正面を向くと、今度は数メートル先のドアの隙間から、ひょっこりと頭だけ覗かせてこちらを見つめる白人の姿が目に入った。
「ジュ、ジュリオさんまで……」
やばいやばい。結月は今、真っ裸なのだ。真っ裸で、仰向けに寝転がっているのだ。
ばっと下を向くと、いつの間にか動きを止めて、わなわなと唇を震わせる結月と視線がかち合った。
「ゆ、結月……っ」
「わ、わわわ、わわ……」
剝き出しの細い肩。小さな胸の隆起。引き攣る呼吸と連動して、薄い下腹が浅く上下している。
思わず、ごくっと喉が鳴った。それと前後して、すぐそばの階段から聞こえてきた声に、びくっと肩が跳ね上がる。
「聞いた聞いた? 今、『ケダモノ!』って言ってたよ!」
「聞いた聞いた! 間違いなく、『ケダモノ!』って言ってたよ!」
「こら{六槻|むつき}、{九重|このえ}、危ないから階段走るな!」
{小柳|こやなぎ}六槻と小柳九重――同じく四階住みの、双子の高校生だ。注意しているのもまた、四階住みの寮のリーダー、{榊|さかき}{爽明|そうめい}と見て間違いない。
はっと我に返った晃大は、すかさず自身が羽織っていたジャージを脱ぎ、結月へと手を伸ばした。
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