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「予想外にモップ掛けする羽目になっちゃってさ。遅くなって悪い」
ベッドに腰掛けて俯く結月は、すでに着替えを済ませているようだった。エアコンもスイッチを入れ直したらしく、濡れた服一枚でいる晃大からすれば少し肌寒い。
「着替え、クローゼットにしまっとくから。使用済みのほうは、また俺の服と一緒に洗濯しとく」
言った通り、洗濯済みのほうの服をクローゼットにしまい、使用済みの服は、洗面所に設置した洗濯かごに突っ込む。ようやく自分も服を着替え、髪を乾かして部屋に戻ると、結月はまだベッドに腰掛けて俯いていた。少し前まであれだけ泣き喚いていた人間がこうも大人しくなっていると、逆に心配になるというものだ。
「あー……えーっと……」
どうしよう。もう一度、面と向かって謝罪しておくべきか。いつものようにウリウリと怒っているのであればそれも簡単に実行できたのだが、黙り込まれるのが一番キツい。接し方を間違えれば、取り返しのつかないことになりそうな危うさがある。
ここは一つ、いつも通りを装って……。
「アニメ、どうする? 続き見るか。……あーでも、テレビ点くのかな。エアコンもついてるからいけるとは思うけど」
独り言のように言いながら、リモコンを操作してテレビを点ける。しかし、停電の際に設定がリセットされてしまったらしく、映ったのは見慣れない初期設定の画面だった。
「ああ、これログインし直さないとじゃん。パスワードなんだったっけ」
なんとか初期設定は済ませたものの、登録している動画配信サイトのサブスクからもログアウトされてしまっている。
サブスクのアカウントは晃大のものだ。結月が元から入っていたサブスクでは例のアニメが配信されておらず、改めて一話から二人でそれを鑑賞するにあたって、晃大が別の動画配信サイトに登録した。
パスワードは確か、結月と一緒にいるときに適当に考えたはずだが、思い出せない。試しに『pokochin4545』と入力してみたが、ログインできなかった。『4545』のほうは合っているはずだから、問題は英文字だ。チンコ関連だった気もするが、金玉の可能性も捨てきれない。いやしかし、その場合、あとに続く『4545』が意味不明になってくる。金玉はしこしこではなく、もみもみするものだからだ。
結月に聞けば、覚えているかもしれない。しかし、ほんのわずかでも金玉の可能性があることを思えば――いや、そうでなくとも、今、結月の口からシモに関するワードを聞き出すのは賢明な判断とは言い難かった。
無言でテレビの画面を消し、晃大はリモコンをテーブルに置き直した。
「……結月」
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