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「あれ、御子柴先輩、来週シフト休みっすか?」
バイト終わり、更衣室で着替えているところ、魁斗に声をかけられた。
「ああ、うん。火水木と休みもらってる」
「ジャスト・お盆っすね。実家に帰省っすか?」
「そ。つっても千葉だから、一時間もあれば帰れるんだけど」
すると、魁斗が意外そうな顔をした。
「日帰りで十分じゃないっすか?」
ごもっともな意見だった。しかし、そういうわけにもいかないのだ。
「妹に言われてんだよ、絶対に泊まってくようにって」
「え、ブラコン?」
妹に不名誉な汚名を着せられかけ、「ちげーよ」と即座に否定した。
「妹、去年まで小学生だったから。まだ幼いんだよ」
「ああ。じゃあ、シスコンっすね」
なにが「じゃあ」なのかわからないので、晃大はあえてスルーすることにした。
「この時期、家族揃って心霊番組見るのが家の恒例でさ。妹、怖いの苦手なくせに、そういうの見たがるタチなんだよ。で、俺はお盆休み限定で、トイレの付き添い係に任命されてるってわけ」
「ほえぇ。実家でもバウンサーやってんすね」
はたして、幽霊相手にバウンサーが必要なのかはわからないが。家は母子家庭で、なおかつ男兄弟が自分しかいないので、父親に代わり、晃大が用心棒的な立場であるのは間違いなかった。
思うに、心霊番組でよく見る血まみれの女性の霊よりも、その女性を血まみれにして殺したであろう人間の男のほうがよほど恐ろしい。
兄の欲目を抜きにしても、妹は可愛いほうだ。もし鈴羽のときのように、妹におかしな真似をする男が現れたとしたら、自分はそのとき、その男を縊り殺す自信がある。
「そんじゃ、千葉のお土産楽しみにしてますね。俺は先輩の分まで、お盆もせっせと働いてますんで」
ついさっき、千葉くらいなら日帰りでも十分だなんだ言っていたくせに調子のいいやつだ。その場は適当に受け流しつつ、今朝、目を覚ました結月と食堂に訪れるなり晃大が持ち出した話題は、まさにその『お土産』関連のものだった。
「そういや結月って、落花生とか好き? 食える?」
「落花生?」
夏季休暇でも平日は欠かさず朝食と夕食を振舞ってくれるジュリオの特性ブリオッシュを食べる手を止めて、結月はことりと首を傾げた。
「それって、ピーナッツみたいなやつのことか?」
「みたいってか、ほぼそれ。殻むいてるか、むいてないかの違いだから」
「ふうん……」
呟いた結月の唇が、ほんの少し尖っている。
「てか、なんで急に落花生なんだ。それを使ってなにをするつもりだ」
「なにをするつもり、って」
むしろ、落花生を使ってなにができるというのだろう。
「千葉の土産だよ。明後日帰省するって言っただろ? うちの名物、落花生だからさ。落花生パイとか人気なんだけど、おまえ食える?」
「落花生パイ?」
繰り返した結月が、ややあって、しゅんと俯いた。
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