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「……俺、ピーナッツ類だめだから」
「マジか、アレルギー?」
こくりと、結月が首を縦に振る。万が一と思い訊いてみたのだが、確認を取っておいて正解だった。
「聞いててよかった。じゃ、別のもん買ってくるわ。ここの寮生って、三十人ちょいだよな? あと、一条さんとジュリオの分もだから……」
ここ『VIPマグナム男子寮』では、毎年お盆の時期になると、食堂にさまざまな帰省土産が並ぶのだ。決して義務というわけではないのだが、知っていてスルーするのも面目ない。
去年、一昨年は落花生パイを買ってきて置いていたのだが、今年はやめておこうと思った。せっかくなら、結月も食べられるものがいい。
「べ、別に俺に合わせなくても、好きなもん買ってくりゃいいだろ」
「俺はおまえの好きなもんを買ってきたいの」
半ば意図的に、攻めた発言を試みた。じっと目を見つめる晃大に、じわじわと結月の頬が赤らんでゆく。
「な……っ、なんだよそれ! 人を食いしん坊みたいに!」
そう受け取るのかと、思わずツッコみそうになった。
「はは、いいじゃん食いしん坊。……てか、食いしん坊で思い出したけど、ここの食堂、出るらしいぜ。取り置きしておいた飯がなくなったり、人数分用意していた土産がたった一日で空っぽになったりっていう、妖怪食堂荒らしが……」
「もうその手には乗らないぞ!」
妖怪金玉潰しのことを言っているらしい。あのときはあわや絶交の危機かと焦ったが、雷に託けて一緒に寝たのをきっかけに、むしろ結月との親密度はアップしたといっても過言ではない。
朝目覚めたとき、腕の中ですやすやと眠る結月を見たときは、あまりの愛おしさに胸が苦しくなった。込み上げる『守りたい』という衝動に、自分が結月に惚れていることを改めて自覚させられた。
それは間違いなく能動的な欲求であるが、その芯の部分を支配するのは、もどかしいほどに受動的な欲求だ。『守りたい』のではなく、『守らせてほしい』。そうできる位置に、自分を置いていてほしい。構造的な主導権は、とっくに結月の手の中だ。
「いやいや、これはガチなんだって。現に俺の取り置きしてる飯とか、たまに誰かが食ったあとみたいになってるし」
「おまえが嫌われてるだけじゃないのか」
「ひどくない?」
ふんっと、結月は鼻を鳴らしてブリオッシュにかじりついた。
ぽろぽろと受け皿に落ちるパン屑を眺めながら、結月の喜ぶお土産ってなんだろうと、晃大は考えを巡らせた。
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