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実家に帰るのは正月ぶりだった。玄関の扉を開けるなり飛びついてきた妹を抱き留めながら、以前そうしたときよりも、ほんの少し背が伸びているように感じた。
「お兄ちゃん、おかえり!」
「おう、ただいま。光梨 、ちょっと身長伸びたんじゃねえか?」
「伸びた! 背の順、後ろから三番目だよ!」
母も背が高いので、遺伝だろう。顔がいいのも、きっと遺伝だ。
妹と二人でリビングに向かい、手土産に持ってきたバナナ型のスポンジケーキを母へと差し出すと、わざわざいいのにと苦笑された。けれど母も妹もスイーツ好きで、晃大が帰省している間に、八個入りの箱は空になる。
「大学はどんな感じ? ちゃんと単位取れてるの?」
久々に家族揃って食卓を囲みながら、母に訊かれた。夕食は、妹も協力して作ってくれた手作りのハンバーグだった。
「取れてるよ。ぼちぼち就活も始めなきゃなって感じだけど」
「じゃあまずはその青髪から脱却しなきゃね」
いじってくる母に、「お兄ちゃん、K-POPアイドルになってよ!」と妹が無茶ぶりを要求してくる。最近、隣国の男性アイドルグループにハマっているようで、来週には、神奈川で開催されるコンサートにまで足を運ぶ予定らしい。お兄ちゃんっ子だった妹が、自分以外の異性に興味を持ち始めたことは少し複雑ではあるが、その辺のしょうもない男にうつつを抜かしているよりかはよほどいい。
ちなみに、彼氏ができた際には、手を繋ぐよりも先にまず自分に紹介しろと、中学に上がる前から口酸っぱく言い聞かせてある。
「寮での生活はどうなの。ルームメイトだった徹くん、三月いっぱいで退寮しちゃったんでしょ。今はまた別の子と相部屋してるの?」
「ああ、うん。一個下の結月ってやつと。まあ、上手くやれてるかな」
その年下で同性のルームメイトに片思いしていると知ったら、母も妹も仰天するだろう。
「どんな子なの? 写真ないの、写真」
見たい見たいと、妹も身を乗り出して催促してきた。
「ないよ。男同士で写真とか撮らないだろ」
言いながら、大島と結月が肩を寄せて笑う高校時代の写真を思い出し、少しもやっとした気分になった。最近見かけないが、結月は今でも、あの写真をどこかにしまっているのだろうか。
その後、新しいルームメイトに興味を示す母と妹に、結月がとにかくだらしないやつで、それを更生するために日々、晃大も一緒になってお片付けトレーニングに励んでいることを伝えると、なにそれ変なのと笑われた。たしかに、なにそれ変なのって話ではある。
「あんた、そんなとこでもお兄ちゃんやってんのね」
「あとで光梨の部屋の片付けも手伝って!」
三人囲む食卓は、終始、活気で満ちていた。
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