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 冷たいコーラをグラスに注ぎ、大袋のスナック菓子をつまみながら家族恒例の心霊番組を見終えたのは、午後十一時を少し回った頃だった。トイレに行くときはついてきてねと念を押してくる妹が一足先に自室に引き上げていくのを見届けて、晃大は一枚の封筒をバッグから取り出した。 「母さん、これ」  布巾でテーブルを拭く手を止めて、母が振り返る。晃大の手にある封筒を見て、ほんの少し眉尻が下がった。 「そういうのはいいって言ってるでしょ。寮で一人暮らししてるのに、どこからそんなお金が湧いてくるのよ」 「飲み屋でバイトしてるから、それなりに余裕あるんだって。寮の家賃は激安だし」 「だったら、自分の大学のローンの返済に充てなさい」  バナナの形をしたパンケーキを土産に差し出したときとは違い、きっぱりとした固辞だった。 「それは社会人なってからでいいから。――光梨、来週コンサート行くんだろ? 中学生にもなると、いろいろ付き合いも増えるだろうし。そんなかから、適当に小遣いでもやってくれよ」  すっとテーブルの上で封筒を滑らせて、晃大は席を立った。洗面所で歯磨きを済ませ、リビングにいる母におやすみと声をかけて部屋に戻ろうとすると、ありがとねという言葉が返ってきた。小さく首を横に振り、晃大はリビングを後にした。  実家に帰るのは、正月と盆の年二回。ナイトクラブでバイトするようになってからは、実家に帰るたび、こうして仕送りをするようになっていた。  立派なことをしているつもりもなければ、健気な一人息子を演じているつもりもない。事実として晃大は、なにも自分の生活費を切り詰めて、仕送りするお金を捻出しているわけではないのだ。  アイデンティティの青髪は月一で美容室に通うことによって保っているし、気に入ったものであればブランド物の服でも買う。連れと飲み歩くことなんかしょっちゅうだし、ワンナイトの女の子とホテルに行く際は、言わずもがな全額、晃大の負担だ。たまに思いっきりやりたいときなんかは、買春まがいにエヴァンとまぐわうことさえあった。  週五回、夜の店で働いた金で、日々はそれなりに充実していた。仕事内容にしろ、吐瀉物処理だけは本気で勘弁してほしいが、それ以外はわりと楽勝だ。外交的かつ夜行性の晃大には、あれくらいフリーダムな職場でちょうどいい。  自分は決して、真面目な人間じゃない。そして同時に、可哀想な人間でもないのだ。好きなように、したいことをして生きている。ただ、そのしたいことのなかに、人並みに家族を支えたいという思いも含まれているだけの話だ。貶される筋合いもなければ、褒められる筋合いもない。誰にも危害を加えず、自分の成し得る範囲で、自分のしたいことをしているだけなのだ。

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