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自室に戻ると、帰省にあたり、母が洗濯しておいてくれたシーツに身を横たえた。なんとなしに目を向けた棚の上には、複数の表彰盾や、トロフィーが並んで飾ってあった。すべてテニス関連のもので、学生時代、テニス部に所属していた頃に獲得したものだ。
和真との一件でレギュラーを外され、こんな理不尽な処遇を受けるならと、以降、退部届すら出さないまま部活をばっくれた。そのとき、表彰盾やトロフィーなんかもまとめて燃えないゴミに出してやろうと思ったのだが、母にバレて止められた。どうしてあんたがこれを捨てなきゃならないのと真顔で訊かれ、こちらも冷静になって考えてみると、まともな理由は何一つ見当たらなかった。
ゴツゴツとしたゴミ袋を自室に持って上がり、ふたたび一つずつ、中身を取り出して棚に並べているとき、無造作に詰め込まれたそれらに、すでにいくつかの傷ができてしまっていることに気がついて、目の奥が熱くなった。
はたしてあのとき、自分は悔しかったのだろうか。悲しかったのだろうか。多分そのどちらも正解で、けれどそれ以上に、自暴自棄になる自分を止めてくれる存在がいることに、痛いくらいに感謝していたのだと今ならわかる。
ごろりと寝返りを打って、白い壁を眺めた。遠い感傷を経て、今度は結月のことを考えていた。
結月の実家は電車で四十分ほどの都内にあるらしく、明日、日帰りで顔だけ見せてくると言っていた。だったら本日は、晃大のいない部屋でまったりと過ごしていたのだろうか。
大島のやつから、変な連絡が来ていないといいが……。最近、チャットで長文を送りつけるだけでは飽き足らず、二日に一度のペースで電話を掛けてきやがるのだ。もちろん無視するように結月には言ってあるが、晃大が帰省しているこのタイミングに限って、魔が差して電話に出てしまうなんてことがないとも言い切れない。考え出すと、急に不安になってきた。
枕元に置いたスマホを操作して、結月のチャット画面を開く。ほんの少しためらった後、勢いに任せて通話ボタンをタップした。
あらかじめスピーカーに設定して、スマホを枕元に置き直した状態で応答を待つ。単調なメロディが四回、五回と繰り返し紡がれるたびに、針の先ほどだった不安が膨らんでゆくのがわかった。
――通話中、なのか……?
過った嫌な予感を断ち切るように、ぷつりとコール音が止んだ。前後して聞こえてきた『もしもし』という声に、意味もなくスマホを振り返った。
「も、もしもし」
『なんだよ、こんな時間に電話なんて』
相変わらずの、小生意気な口調。ちらと時計を確認すると、もう直、日付が変わろうという時刻だった。
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