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明け方、寮に帰ると、部屋はしんと静まり返っていた。寝顔を見られるのも嫌だというように、結月は壁と向き合って眠っている。
(だからもう、話しかけてこないでほしい)
そう言ってはっきりと絶縁を突き付けられたあの日から、かれこれ二週間。言われた通り、晃大は一度も結月に話しかけていなかった。いうまでもなく、結月のほうから話しかけてくることもない。
以前にも一度、エヴァンと寝たのをきっかけに、こんなふうに口を利かなくなったことがあった。だったらまた折を見て仲直りできるんじゃないかなんて淡い期待は、すでに捨てている。なぜならあのときと今とでは、決定的に異なる点があるからだ。
薄暗い部屋の真ん中に立ち、じっと目を凝らして辺りを観察する。
几帳面に一巻から順に並べられた漫画に、ハンガーに掛けて吊るされたアウター。ゴミはゴミ箱にきちんと収められ、床にはパンツ一枚だって落ちていない。
いや普通、床にパンツは落ちていないだろうと思うかもしれないが、それはにわかの発想だ。曲がりなりにも五ヶ月近く、結月と生活してきた晃大にはわかる。これは、明らかな異常事態だ。
以前、仲違いした際、結月は結月なりに部屋を綺麗にしていた――つもりだったことが、あとから判明した。しかし、その差は微々たるもので、結月が根っからのだらしないやつであったことも、同時に判明した。
で、どうだ。この、異常なまでの部屋の整いよう。もはや、整っているとかのレベルじゃない。ほこり一つ見当たらないレベルで、部屋がピカピカなのだ。
晃大に嫌われるために陰毛を毟り撒いていた当時から一変、今はもう、『おまえに頼ることなんて何一つありません』とばかりに部屋は片付いている。結月との関係は、正真正銘、終わったのだ。
ならばもう、いつまでも未練を引きずっていたって仕方ない。だから晃大は、結月に絶交を突き付けられて以降、また女の子とホテルに行くようになった。別に自暴自棄になっているとかではなく、今まで通りに戻っただけだ。結月を好きになって以降、意図して断っていたものを再開した。ただそれだけ。それだけの、はずだったのに……。
まさか、少し放置している間に、ちんこが使い物にならなくなっていようとは。いざ今までどおりの生活に戻ろうと思ったときには、すでに、それが実現不可能な体になってしまっていたのだ。
力なくベッドに仰向けになり、晃大は途方に暮れた。
綺麗すぎる部屋は、むしろ心を落ち着かなくした。
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