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「んっ」  感じない。握っているだけなのだから当然だ。と、自分に言い聞かせて軽く扱いてみる。 「んんっ」  やはり、感じない。なんというか、もともとそこが性感帯でもなんでもないような、摩擦が摩擦としか認識されないような、妙な感じだ。どころか少し、不快感さえある。 「くそ……っ」  こうなったら無理やりにでも勃たせてやると、晃大はがむしゃらにちんこを扱いた。しかしそれから三十分が経っても、握り締めたちんこは柔らかいままだった。 「いっ、てぇ……」  ムキになって擦りすぎたせいで、ちんこが赤くなっていた。切実に恐ろしいので、もう扱くのはやめて、ゆっくりとパンツの中で寝かせてやることにした。  ずっと同じ体勢でいたので、両手を放り出してベッドに仰向けになると同時、どっという疲労感に襲われた。 「マジで勃たなくなってんじゃん、俺……」  これはさすがに、病院にかかったほうがいいのかもしれない。勃たないなら勃たないでいい、なんて余裕をぶっこいていられたのは、結局のところ、本気を出せば勃つだろうという甘い考えあってのことだった。  いやしかし、これが心因的のものであるとするならば、医師に相談したところで手立ては限られている。せいぜいメンタル的なアドバイスを受けて、薬を処方してもらうくらいだろう。  要は、その心因的な問題を解決すればいいのだ。そうすれば、わざわざ病院になんかかからずとも、またこれまでのように勃起できるに違いない。そして実際のところ、思い当たる節なんてのは一つしかなかった。  のっそりと身を起こし、静まり返った部屋を一望する。自分の心と同じくらい、空っぽな部屋を――。 (……もともと、苦手だったんだ。おまえみたいなチャラチャラしたやつ)  結月にかけられた言葉が、今も脳裏にこびりついていた。思い出すと、すっと頭が冷える。後を追うように、全身から体温が奪われてゆく。  認めたくはないが、どうやら自分は、未練たるものを引きずっているらしい。もう諦めるほかないのだと頭では理解しているが、心がついていっていないのだ。  やはり、自分とエヴァンは似ていると思った。失恋の痛みを、セックスで紛らわそうとするあたり。ただ一つ、異なる点があるとすれば、晃大は心のみならず、体までも感じなくなってしまったということだ。  一体、なにがいけないのだろう。好みの女の子としてもダメ。一人でしてもダメ。だったら自分は、誰相手なら勃起できるのだろう……。 「……男?」  消去法で導き出された答えに、思わずゲッと顔を顰めた。  男で勃起……。考えただけでゾッとする。  そりゃ、自分は結月が好きだった。結月は男だ。エヴァンとは何度もセックスした。エヴァンも男だ。だが。しかし。あの二人は例外だろう。結月は女の子に匹敵するレベルに華奢で可愛い容姿をしているし、エヴァンに関しては、こう……欧米人だけあってタッパはあるが、とにもかくにも顔面が整い過ぎていて、男とかいう概念を超越している。  しかし、『男』といったら、普通はそんなやつばかりじゃない。いやむしろ、結月やエヴァンのように、同性でありながら髪を撫でたり、抱きしめたりすることに抵抗を感じないクオリティの男なんてほんの一握りしかおらず、大体はビッグフットのように毛むくじゃらで、ゴーレムのごとくゴツゴツとした、クラーケンもびっくりのイカ臭い野郎ばかりに決まっている。 「……」  まあ、それはさすがに言い過ぎだったかもしれないが、なんにせよ、男で勃起はまずありえない。ありえない、が――試してみる価値はあるだろう。

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