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「じゃ、じゃあ権三郎さん。立ち話もなんですし、さっそく行きますか」 「あ、ああ……」  初めての土地に戸惑う晃大とは裏腹に、サキは迷いのない足取りでコンコースを歩き出す。 「サキくんはここ、地元なんだっけ」 「いえ。住んでるところは、もっと田舎のほうです。さすがに、地元でこんなことは……」 「ああ、ね……」  サキの隣をついて歩きながら、横目でその初めて見る顔を観察していた。  肌は白く、ニキビなどは見当たらないが、よく見ると薄っすらそばかすがある。目は少し切れ長で、奥二重だろうか。鼻は低くも、高くもない。唇は少し小さめ。髪型はやや野暮ったくはあるが、清潔感のある癖のない黒髪。まあ、大体想像していた通りの平均顔だ。……いや実際、これといった欠点がない時点で、平均よりは上のほうかもしれない。なにせ晃大の想像する平均は、ビッグフットとかゴーレムとかクラーケンだ。 「ご、権三郎さんは、本当に身長が高いんですね。プロフィールの百八十一って、正直、嘘かと思ってました。いや、まったくの嘘じゃないにしても、ちょっとは盛ってるのかなって……」 「どうだろ。最後に測ったの、高三のときだしな。案外縮んでるかも」 「ええ? 絶対そんなことないですよ。むしろ、伸びてるんじゃないですか? いいなあ、格好よくて」 「いやいや」  同性でありながらストレートな誉め言葉に、晃大は苦笑して謙遜する。一見、和やかに言葉を交わしつつも、内心では妙な胸のざわめきを覚えていた。 「あ、ここですね」  駅の雑踏を抜けて十分ほど歩いたころ、そう言ってサキが足を止めた。がしかし、晃大はこんな場所で立ち止まりたくない。 「早く入ろうぜ」  再度キャップのツバを下げ、少し急かすように言うと、サキは驚いたように目を見開いた。 「あ、は、はい……!」  なんだかせっかちな男と思われたみたいで複雑だが、そんなことを気にしている場合でもない。一刻も早く、人目のつかないところに行きたい。 「えっと、受付の人は……」 「は?」  反射的に訊き返しつつ、返事なんて待つ間もなく「ここでいいよな?」とフロントのパネルをタップした。手しか見えない受付のスタッフに料金を支払うべく財布を取り出すと、サキも慌ててカバンに手をかける。 「あ、半分払いますっ」  おいおい。おいおいおい。晃大は一つ咳ばらいをし、いつもより低い声を意識して口を開いた。 「……いい。俺が払う」 「で、でも……っ」  マジで黙ってくれと、心の底で念じながら、とっとと万札をトレーに置いた。 「これで」 「……はい」  帰ってきたおつりと鍵を受け取って、足早にフロントを立ち去る。きょろきょろと落ち着きのないサキを引き連れて入室した部屋のど真ん中には、見慣れたキングサイズのベッドがあった。  ひとまず、知り合いに遭遇せずにここまでやってこれたことに、晃大は胸を撫で下ろす。

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