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 止まっていた手を動かして、露わになった乳首を撫でる。 「んんっ」 「ここ好き? 自分でも触ったりする?」 「ん、する……っ。もっと……っ」  要望に応え、先端をきゅっと指先で摘まんだ。 「ああっ」  結月と違う声。過った思考を、即座に振り払った。  違う声で当然だ。違う髪で当然だ。違うほくろの位置で当然だ。だって、この男は結月じゃない。結月だと思って抱こうとしても、意味がない。 「サキ」  こびりつく結月への未練を振り払うように、その名を呼んだ。 「サキ、下、触るぞ」  突然の呼び捨てに驚いたように目を瞬いたサキが、やがて、ゆっくりと首を縦に振った。ローションを手に取り、窄まりに触れる。 「あっ」 「力抜いて」  下腹を撫で、つぷりと指先を挿入した。 「ああっ」  やはり、初めてというわけではなさそうだ。それなりに中が柔らかい。  くちゅくちゅと挿入した指を動かしながら、もう片方の手で自身のちんこを握った。感じるサキを眺めながら、ゆっくりとそちらの手も動かし始める。 「ん、んん……あっ」  サキは前立腺を擦るたび、ぎゅっと中を締めて体を震わせた。  結月と違う声。結月と違う顔。結月と違う性格――。  けれど、ほくろの位置はやはり似ている。肌が白いところも似ている。華奢なところも似ている。 「……っ」  ぞくりと、もう長らく味わうことのなかった熱が込み上げた。拍車をかけるようにちんこを握る手に力をこめると、みるみるうちに硬度が増してゆく。  ――マジか、俺……。  あれだけ試して、だめだったのに。ネットで知り合った初対面の男との前戯で勃起するなんて。 「はあ……はあ……」  体の熱が増すとともに、だんだんと思考回路が鈍くなってくる。ほくろが一センチずれているとかいないとか、そんな細かい違いは、もはや判断がつかなくなっていた。  持参してベッドボードに置いていたXLサイズのゴムの封を切り、手際よくちんこに装着する。顔を上げ、一番に目を向けたのはやはり、ほくろだった。  じっとその一点だけを見つめたまま、固くなった中心を窄まりに押し当てる。 「あっ」  しかし、すぐには挿れない。押し当てたそれで、その窄まりをなぞるように円を描く。 「あ、ああっ」  お互いに、もうこれ以上は待てないというほど体が高まったそのタイミングを見計らい、晃大はついに、ちんこを握っていた手に力を込めた。 「挿れるぞ、結月……っ」 「きて、{慎一郎|しんいちろう}……っ」  ……は? と、揃って顔を見合わせた。 「結月?」 「慎一郎?」  マジで、誰だそれ。権三郎ですらないのだが。  じっと目を見つめ合うこと数秒、ふいに、結月――否、サキの瞳から涙が溢れた。 「慎一郎じゃ、ない……」 「え」 「慎一郎じゃない……っ」  ぎゅっと手足を丸め、サキは肩を震わせて泣き始めた。  ……なにを、寝ぼけたことを。普通なら、そう思うかもしれない。けれどこの状況、晃大には身に覚えがありすぎた。  最後にセックスをしたときのエヴァン。なにより今、勢いに任せてサキを抱こうとしていた自分自身。ベッドの上、触れ合っている相手ではない誰かの名前を出すということは、つまり、そういうことだ。  繋がる前に正気に戻れたのが、せめてもの救いだった。

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