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 秋の日は鶴瓶落としというだけあって、帰りの電車に乗り込むときにはまだ薄っすらと明るかったはずの空が、県を跨ぐころにはすっかりと暗くなっていた。外の景色を映していた車窓は、今や疲れ切った自分の顔を映す鏡となっている。 (四年間付き合った相手に振られて……)  行為を中断し、しくしくと啜り泣き始めてしまったサキを見守ること二十分ほど。ようやく落ち着きを取り戻した彼が口にした内容は、概ね想像通りのものだった。要は、失恋した勢いで別の相手を探し、体を重ねて、想いを吹っ切ろうとしたと――。  馬鹿だなあと思ったが、自分も人のことは言えないので、この際とことん付き合って話を聞いてやることにした。実は、慎一郎以外の相手と寝たことがない……おじおじとそんなことを打ち明けてくる相手と、その後、じゃあ気を取り直して一発ヤりますか、なんて流れにはなるはずもない。結局セックスはせず、今は無理に相手探したり、勢いで寝たりしても余計に傷つくだけだからやめたほうがいいよ、というもっともらしい晃大のアドバイスをもって、その場は幕を閉じた。まったく、どの口が言っているんだという話ではあるのだが……。 (コウタさんはもう、ユヅキさんのことは吹っ切れてるんですか)  駅での別れ際、ふと、サキに尋ねられた。それまで意図して聞き役に徹していた晃大は、咄嗟に、言葉が浮かばなかった。 (ああ、俺はその……)  アナウンスが、最寄り駅の名を告げた。つり革から手を離し、ホームに降り立つと、妙な哀愁を伴った風に服の裾を揺らされる。  帰ってきたんだなと思った。初めて訪れる土地で、初めて会う相手と体を重ねようとした。そんな非日常からの帰還。  暑苦しい黒マスクを外し、改札を出た。見慣れた建物の数々。漏れる窓明かり。すれ違う人々は、晃大が今日、どこでなにをしてきたかなんて知る由もない。知りたいとも思わない。いちいちそんなことを気にかけてくれるのは、一つ屋根の下で暮らす家族や恋人くらいだろう。無論、晃大の帰る先に、そのような存在はいない。いるのは、ただ一人――。 「なあ結月、もしかして、まだあのときのこと怒ってるのか」  耳を掠めた声に、はっと足を止めた。数メートル先、寮のポーチライトに照らされて向き合う、二人の男の姿。  一人は言うまでもなく、結月だった。身に纏っているのが部屋着であることからして、外出帰りというわけではなさそうだ。知り合いが来て、応対している……?  ――て、いうか……。  横顔だったので一瞬、判断に遅れたが、よく見たらあいつは大島だ。  ――あのストーカー野郎……。  とうとう寮まで押しかけてきやがったのか。

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