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「前にも言ったけど俺、あんときのことは本気で反省してるんだ。おまえのことが好きで、肝心のおまえの気持ちを置き去りにしちまってた。そのことに関しては、前にも一度謝って、もう気にしてないって言ってくれてたよな? だったらなんで俺からの連絡無視するんだよ」
「そ、れは……」
それは、晃大が無視しろと指示していたからだ。結月はそのアドバイスに応じて、今日の今日まで大島のことを無視していたらしい。今日の今日、までは……。
――なんでよりにもよって、対面でツラ突き合わせちゃってんだよ……。
おおよそ、寮の前まで来てるから出てきてくれとか、出てきてくれないならずっと外で待ってるとか言われたのだろうけれど。
――そんなことになってんなら、まず俺に連絡入れろよな……。
抱いたもどかしさは、今となっては一人善がりに等しかった。自分は結月に必要とされていないのだ。
「俺、心配してたんだぜ。こんなに返信がないってことは、もしかしておまえの身になにかあったんじゃないかって」
「う……」
「けど、おまえが無事で安心した。俺、あんときはおまえのこと守ってやれなかったけど、今度こそちゃんと、おまえのこと守ってやりたいんだ」
――は? 誰から?
「どうせあの、都道府県すらろくに覚えてなさそうな頭すっからかんの青髪野郎に、なんか唆されたんだろ。俺からの連絡は無視しろとかなんとか」
「こ、晃大はそんなこと……」
言ったし、現に都道府県もうろ覚えなので、結月は黙り込んでしまった。
「なあ、正気になれって結月。俺、テニスコートでおまえと再会したとき、びっくりしたんだぜ? なんか見るからにあったま悪そうな青髪のやついるなあと思ったら、その連れがおまえなんだもんよ。ったく、どうしちゃったんだよ一体。学生んときからおまえは、ああいういかにも『ヤることしか考えてません』って感じの猿みたいな連中、苦手だったじゃん。ありゃその猿山のボスみたいなもんだぜ。猿山のボスってのはよお、所詮、猿山でしかイキれないんだよ。一歩まともな社会に出れば、即、落ちこぼれ。バカって{感染|うつ}るから、すぐにでも縁を切ったほうがいい」
「……」
「そうだ。縁を切るなら、この寮ごと考えたほうがいいかもしれないな。なんかちょっと下品じゃねえか? ここの寮の名前。『BIGマグナム』って……」
VIPだ。
「VIPです」
「なんにせよ、おまえには似合わねえよ。俺今一人暮らしだし、なんなら一緒に住まねえ? 安心しろよ、バイト増やせとか言わねえし、就職したら、俺が養ってやるからさ」
一人ベラベラと御託を垂れ流す大島に、結月は口を噤んでいた。無理もないだろう。同じ状況なら、晃大にしろ呆れてものも言えないはずだ。ここまであからさまに自分を避けている相手に対し、一緒に住まない? 養ってやる? どういう思考回路をしていたら、そんな言葉が出てくるのか。理解に苦しむ。
「なあ、なんとか言えよ結月。それともまた、俺を裏切るのか?」
ふっ、と。その言葉を境に、空気が変わったのがこの距離でもわかった。大島と対峙する結月の態度に、これまでなかった戸惑いが滲む。
「高校時代のこと、俺も悪かったとは思ってるけどさぁ……」
――俺『も』……?
「正直、おまえにだって責任はあるだろう。先輩、先輩ってあんなに懐いてきてたくせに、いざ告白されたと思ったらあんなかたちで拒絶するとか……。可愛がってた後輩に裏切られた挙句、三年間、努力してきた部活の引退試合であんなみじめな負け方させられた俺の気持ちとか、一回でも考えたことある?」
「ご、ごめ、な……っ」
「謝るくらいなら、もう同じことすんなよ。そしたら、あんときのことは水に流してやるか――」
「どーもぉー。都道府県もろくすっぽ覚えてない猿山のボスでーす」
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