113 / 137
11-15
ぽこぽこと、なんてことない力で胸元を叩かれる。晃大は呆然とそれを受け止めながら、取り乱す結月を眺めていた。
胸の底に、消えかけていた炎が再燃するのがわかる。……いや、違う。消えかけていたのではなく、消そうとしてもなかなか消えず、燻り続けていた熱情だ。
しかし、こんなのは晃大にとって都合のいい解釈かもしれない。勘違いしてはだめだ。勘違いをしては……。
「なあ、結月……」
「好きでも、ないくせに……っ。好きでもないくせ――」
「好きなら、抱きしめてもいいの?」
問いながら、晃大はすでに結月をきつく抱きしめていた。
勘違いなんかじゃない。直感的に、そう悟った。けれど自分は、ここでド直球に相手の真意を聞き出そうとするほど野暮な男ではない。だから。
「好きだ、結月」
主導権などかなぐり捨て、剥き出しの本心でぶつかった。
「好きだから、そばにいさせてほしい。――おまえを、守らせてほしい」
土台、本気で恋に落ちた相手には、駆け引きなんてまどろっこしい真似は通用しないのだ。手持ちのチップ、全て失くしたっていい。いいやむしろ、イカサマでもなんでもして毟り取ってくれ。自分の持ちうる全てを、結月に捧げたい。
「俺を、おまえの彼氏にしてくれ」
生まれて初めての告白。そしてきっと、最後の告白でもある。未来のことなんて誰にもわからないけれど、少なくとも今、この瞬間は、心の底からそうだと信じる覚悟をもって、晃大はその言葉を口にした。だから信じてほしいという思いを込めて、じっと結月の目を見つめた。
「……そこまで、言うなら」
おおっ。
「彼氏にして、やらないこともないこともない……ことも、ない」
「どっちだよ」
肩を揺らして笑った直後、ウリッと突き出したその唇に、不意打ちで自らの唇を重ねた。
「っ――」
色素の薄い大きな瞳が、零れ落ちそうなほど大きく見開かれる。瞬き一つ忘れて、晃大の目をガン見している。こんな色気の欠片もないキスも、生まれて初めてだった。
「マジで可愛い。好きすぎる」
唇を離し、堰を切った愛おしさに、ぎゅっと結月を抱き直した。もう、今のがファーストキスでいい。ファーストキスということにしよう。自分のファーストキスの相手は、結月だ。はい決まり。異論は認めない。
「ば、ばかっ、なにやってんだおまえっ! こここ、公然の場だぞ! ふしだら……っ、ふしだらすぎるっ!」
「んじゃ、さっさと部屋戻ろ。で、もっかいキスしよう」
「だ、黙れ黙れっ。頭のおかしいやつめ!」
相変わらず物凄くお口が悪い。けれど、こうして罵られることに一種の喜びのようなものを感じている自分は、もしかするとマゾというやつなのだろうか。
「行こう」
二人で暮らす、四〇二号室へ。そこが、晃大の帰る場所だ。
ともだちにシェアしよう!

