114 / 137

12-1

「はぁ……はぁ……んっ」  荒い呼吸が鼓膜に響く。パンッと勢いよく打ち込むと同時、こめかみを伝って汗が滴り落ちる。 「前っ! 前、もっと……っ!」 「わかってる……つのっ!」  結月の指示に応え、次こそはとドンピシャの位置を狙って打つ。が、なかなかどうしてヤりきれない。 「あっ、わり、抜ける! 中締めろ結月!」 「え、ちょまっ――ああっ!」  しつこく粘っていた流れを絶たれ、全身からどっと力が抜けた。 「あーくそ、しくった。ごめん結月」 「おまえ、ばたばた動きすぎなんだよ。二人でヤってるって意識あんのかよ。おかげで中、ガバガバんなっちゃったじゃん」 「……返す言葉もございません」  投げ出された晃大の太い{柄|え}が、熱を持ってヌラヌラと光っていた。まさか、結月との初めてのプレイでここまで苦戦することになろうとは……。 「おいおい、パートナーに呆れられてんぞ。今までさんざん自分本位でヤってきたツケじゃねえか? せっかくパートナーができたってのに、むしろ自分の行動範囲に制限かけられたってなばかりのヤりずらそうな動きだったぜ」 「剱崎さん……」  不敵な笑みを浮かべる剱崎の手に握られているのは、わざわざ実家からマイラケットを持参した晃大とは異なる、施設のレンタルラケットだ。さらにいえば、その背後に立ち、爽やかな汗を流しながら「まあまあ」と笑う榊が持つそれも、剱崎同様、借り物のラケットである。 「……そうなのか」  ふと、背後から声がして振り返った。 「そ、そうなのかって?」 「やっぱり、俺と組んでるとヤりずらいとか思ってたのか。一人でのびのびヤってるほうが、気楽でいいって……」  ウリ、と小さく尖った口元を見て、いやいやいやと首を横に振った。 「そんなこと、一言も言ってねえだろ。そりゃ、ダブルスの経験は浅いから、上手く連携取れなかったり、足引っ張ったりすることもあるけどさ……そういう『初めての感覚』みたいなのを、おまえを通じて学んでいくのは素直に楽しいし、嬉しいよ」 「う、うれ、って……っ」  ウリッと尖っていた唇が引っ込んで、代わりに、薄っすらと頬が赤く染まる。 「なんだよ改まってっ。き、気持ち悪いやつだなっ!」 「とかなんとか言って、おまえも俺とペア組めて嬉しいくせに」 「嬉しくないっ!」 「ほんとか~?」 「ぜんぜんっ、ぜ~~~んっっっぜん、嬉しくなんかないっ!」  めーちゃくちゃ頑固なんだが。

ともだちにシェアしよう!