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「十名様ですね。二席に分かれてしまいますが、よろしいでしょうか」  率先して予約を取ってくれた榊が頷いて、『8』と『9』の番号札を店員から受け取った。 「六槻と九重は俺と一緒な。で、将剛もこっち来るだろ?」 「おう。エヴァンと朔ちゃんもこっち来いよ」  顔を見合わせた二人が頷いて、こちらが口を開くまでもなく席決めは終了した。エヴァンが剱崎と仲がいいのは知っていたが、あの朔実とかいう野暮ったい青年が物怖じせず剱崎と接しているのは少し意外だった。  ――結構図太いタイプなのか……?  なんにせよ、こちらとしては剱崎と別の席になれて一安心だ。エヴァンにしろ、結月のことを思えば離れていて正解だったと思う。 「今日は俺と将剛の奢りだから。遠慮せず、食いたいだけ食えよ」  ぞろぞろとテーブル席に向かいながら、「な、将剛」と榊が剱崎のほうを見た。 「ま、テニスは俺たちの全勝だったしな。飯ぐらい奢ってやるよ」 「また煽るようなこと言って。幼馴染だから、連携的な面でちょっとアドバンテージがあっただけだろ」 「え、二人って幼馴染だったんすか?」  初耳だった。どおりで、阿吽の呼吸ばりに連携が取れていたわけだ。 「小学生の頃からのな。ま、腐れ縁みたいなもんだよ」  グラスに水を注ぎながら、榊は肩を竦めて苦笑した。  小学生の頃から一緒で、大学生になって寮でルームシェア――。たしかに、今年の四月に知り合ったばかりの晃大と結月とは年季の入り方が違う。名字では区別のつかない双子と外国人のエヴァンを除き、寮生全員を名字呼びする榊が、剱崎だけは「将剛」と親しみのある呼び方をしているのにも納得がいった。 「それで言うなら、双子ほうが連携取れてたじゃねえか。ちっせーから、スピードとパワーで押し負けてたけどよ。鍛えれば素質ありそうだぜ」 「たしかに。こいつら、初見じゃ見分けつかないしな」  初見じゃなくても見分けがつかないのだが。なんだかんだまた二人で会話を始めてしまった剱崎と榊が『8』と記された席に着くのを見送って、晃大たちもすぐ後ろのテーブル席に腰掛けた。 「郁人、おまえ最高何皿いったことある?」 「寿司だけなら八。大誠は?」 「俺は十九。今日は二十目指す」  人の金だと思って、めちゃくちゃを吐かしている。  さておき、晃大が勝ったら回る寿司、結月が勝ったら回らない寿司、という賭けは、今やあってないものとなっていた。お互い平等にマイラケットを持参してダブルスを組んだうえ、剱崎、榊ペアに負けてしまったのだから仕方あるまい。その結果、二人の奢りで回転寿司をご馳走になるという結末は、ありがたくもあり、情けなくもあった。 「御子柴ー、おまえも酒頼みたかったら頼めよ。こっち、俺も将剛も飲むから。二年も飲みたきゃ頼んでいいけど、二十歳なってるやつだけな」  背後の席に座っていた榊が、振り返ってわざわざ声をかけてくれた。 「あー、あざっす。つってもこっち、俺以外二十歳超えてるやつって……」  自分だけ酒を煽るのもなと周囲を窺うと、意外な人物が名乗りを上げた。 「じゃあ俺、飲もっかな。五月で二十歳なってるし」 「えー、郁人ずりぃ。俺も飲みたーい」 「お酒は二十歳になってから」  羨ましがる大誠へと郁人が言い、「御子柴先輩も頼みます?」とアルコールのメニューを見せてくれた。 「んー、どうしよっかな」  正直、ヤケ酒したい気分ではあるが、まだ法律で飲酒を禁じられている恋人の隣でとなると気が引ける。窺うように結月のほうを見ると、ことりと首を傾げられた。 「なんだ? 俺は飲まないぞ」  結月は遅生まれなので、アルコール解禁は来年だ。 「わかってるって。俺はどうしよっかなーって考えてんの」 「飲みたきゃ飲めばいいだろ」 「ま、それはそうなんだけどね」  晃大が気にしすぎていただけかもしれないが、案外ドライな意見だった。相手が飲むなら飲む、飲まないなら飲まない、みたいな気遣いは無用だったらしい。

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