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「誰だ?」  首を傾げ、晃大は立ち上がった。壁に設置されたモニター付きインターホンを覗き込み、確認した人物に眉が寄った。 「もしもし」  とりあえず通話ボタンを押し、応答すると、ドアの前に立っていた青年の肩がぴょんっと跳ねた。 『あ、こんにちは』 「こんにちは」  礼儀正しいやつだった。  ――『やつ』……てか、『子』?  モニター越しだが、結月よりもさらに少し、身長が低い気がする。容姿もかなりの童顔だ。見覚えがあるような、ないような……注意深く観察してみると、右手に一枚の雑巾が握られていることに気がついた。 「ああ、お掃除くん」  そういえば、雑巾片手に寮内の至る所を掃除して回っている変わった寮生がいたはずだ。何度か寮内ですれ違い、「おかえりなさい」とか挨拶してくれたこともあった気がする。 『{真波|まなみ}です。ここしばらくお片付けの依頼が途絶えていたので、廊下掃除のついでに寄ってみたんですが……。えっと、今、応答されてるのは結月くんですか』 「いいえ、晃大くんです」  答えつつ、晃大は背後を振り返った。ベッドに腰掛けたままの結月が、あわあわと口を開閉させて慌てている。モニター越しのお掃除くんも、ぱちくりと目を瞬いていた。 『これは失礼しました。では、気を取り直して……今、そちらに結月くんはいらっしゃいますか』 「いらっしゃいますよ。変わりますね」  くいと、顎でインターホンを指すと、結月がおずおずと腰を上げた。晃大は少しだけ横にずれ、インターホンの前に立つ結月を無言で見つめる。 「え、っと……{澄雨|すう}くん?」 『あ、結月くん、こんにちは。最近、お片付けの調子はどうですか? 最後にお片付けに上がってから二週間くらい経つので、気になって寄ってみたんですけど……』 「あー、それは、その……なんていうか、その……もう、必要なくなったというか……」 「一回出ますね」  もごもごと返答する結月を遮り、一方的に告げて晃大はインターホンを切った。 「あ、ちょ、晃大っ」 「行くぞ、結月」 「な、なんで晃大まで……っ」  抗議する結月を、晃大はじっと見つめた。結月はうっと口ごもる。そんな結月の手を引いて、玄関のドアを開いた。 「あ、結月くん、おひさしぶり――」  ドアが開いたと同時、そんな挨拶を口にしたお掃除くんが、晃大を見るなり首を傾げた。 「ええっと……?」  困惑した様子のお掃除くんへと、開口一番に晃大は問う。 「真波、なにくんだっけ」 「澄雨です」 「澄雨くんね。よく、この部屋片付けに来てくれてたの?」 「あ、いえ……『よく』ってほどではないですけど、一、二ヶ月ほど前に声をかけてもらって、それから、定期的に……」  不穏な空気を察したのか、澄雨が不安そうに、晃大の斜め後ろに立つ結月を見た。  今から一、二ヶ月前――ちょうど、結月に絶縁を突き付けられたあたりのことだ。たしかあれ以降、不自然なくらいに隅々まで部屋が片付いていた。晃大と関わりたくない一心でめちゃくちゃ頑張って片付けていたのかと思いきや、こんな裏の手を使っていたとは。

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