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「えっと……なにか、問題がありましたか? 触っちゃいけないものまで移動させてしまったとか……」  晃大はすかさず、「いや」と首を横に振った。 「なにか、お返しは貰ってたの?」  問いに、今度は澄雨のほうが「いやいや!」と首を横に振った。 「お片付けくらいで、そんな……! とんでもないです」 「じゃあ、タダで片付けてくれてたの? 合計何回くらい? 一回どのくらい時間かけてた?」 「え、いや、そんな……。覚えてないです……。僕、なにもお返しがほしくてやってたわけじゃないので……」  澄雨は委縮したように俯いてしまった。  結月にも敬語だったあたり、一年生だろうか。突然こんなボス猿みたいな青髪の先輩に詰め寄られたら、それは委縮もするだろう。無論、晃大にその意図はないのだが……。 「ちょっと待ってて」  言い置いて、晃大は大股で部屋に戻った。冷蔵庫の中から未開封の菓子箱を取り出して、もう一度、二人の待つ玄関に戻る。 「澄雨くん、甘いもの好き? 食べれる?」 「え? あ、好き……ですけど……」  澄雨は困惑したように晃大の手元を見た。 「じゃあこれ、デパ地下のマカロン。ごめんね、片付け任せちゃって。今度からはちゃんと自分らでやるから」  菓子箱を差し出すと、澄雨は慌てて首を横に振った。 「えっ、そっ、そんな……っ。受け取れないですっ」 「寮の掃除もタダでやってんの?」  気になって尋ねてみると、ふっと澄雨の表情が変わった。 「あ、それは……」  反応からして、なにかしらの手当はあるようだ。一条の性格を思えば、なんら不思議ではない。例外的な措置だから、他言には慎重になる必要があるのだろうが。 「で、でも僕は、本当に好きでやってるだけなの――」 「好きでやってるってのと、だからその恩恵を無償で受け取っていい、っていうのは、違うと思うよ」  優しく、しかし、きっぱりとそこは否定しておいた。この子の今後のためにも。後ろに立っている結月のためにも。 「部屋、片付けてくれてありがとう。これは、俺と結月からのお礼です。受け取ってもらえるかな」 「……」  再度、差し出した菓子箱に、澄雨がおずおずと手を伸ばした。 「ありがとう、ございます……」 「こちらこそ。わざわざ様子見に来てくれてありがとね。――ほら、結月」  促すと、もごもごと結月が口を開いた。 「ありがとう……と……お返しが遅くなって、ごめん」 「全然です」  澄雨が首を横に振ったのと、晃大がぽんぽんと結月の頭を撫でたのが、ほぼ同時だった。 「では、僕は寮のお掃除に戻りますので」 「おう。いつもご苦労様」 「こちらこそ、いつも寮を綺麗に使ってくださりありがとうございます」  トイレのポスターみたいな発言だった。そう言われると、綺麗に使わなきゃなって気持ちになる。

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