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「バイトのこともそうだ! 特に理由はないとか言ってたけど、そんなのっ、どう考えても俺のせいだって思うだろっ。俺が嫌がるから変わろうとしてんのかなってっ」  その解釈は当たっている。しかし、それが結月にとって重荷に感じられてしまったというのなら、それは晃大の力不足だ。反省しなくてはならない。 「ごめん結月。それは俺が悪かった。タイミングからして、確かにちょっと、押し付けがましい感じになってたかもしんない。……けど、俺はマジで――」 「そういうこと言ってるんじゃない!」  遮られ、釈明の言葉が途切れた。  怒ったようにこちらを見つめる瞳に、今にも溢れ出しそうな涙が滲んでいる。条件反射のように、胸が締め付けられた。恋人の涙は、ダイレクトに己の至らなさを突き付けるナイフだった。 「結月……」  焦り以上に、ショックを覚えた。付き合って、たったの二週間だ。にもかかわらず、この状況――。相性がどうとかの問題ではなく、自分にはなにか、人と付き合ううえで決定的に欠けているものがあるのではないかと疑わざるを得ない。 「……結月、ごめん。泣かせてごめん。俺がもっと、いろいろ、考えて行動するべきだった」  ごめんなと、もう一度、結月を抱き寄せた。謝ってはいるが、実際には、これ以上どうしたらいいのかわからなかった。抱き寄せて、キスをして。それで解決するなら、とっくにそうしている。それじゃいけないと思うから、怒りだか、悲しみだか、小刻みに震える背中をそっと撫でさすることしかできなかった。 「……さし、すぎるから……」  ふと、胸の中で結月が呟いた。 「ん?」 「おまえがっ、優しすぎるから……っ」 「……え?」  背中をさする手を止め、晃大は耳を澄ました。 「無理して、俺に合わせようとして……っ、そのうち、やっぱ前のほうがよかったとか言い出すんじゃないかって……っ。俺なんかと付き合うんじゃなかったって、言い出すんじゃないかって……っ」  息を詰まらせる結月の顔を覗き込み、晃大はそっと問いかけた。 「……不安になっちゃった?」  ひっくと肩を揺らした結月が、唇を尖らせて小さく頷いた。あまりの愛おしさに、一瞬、ガチで呼吸が止まった。  それと同時、こんなにも愛おしい恋人を不安で泣かせている自分の不甲斐なさを痛感した。痛いくらいに、結月が好きだった。 「結月」  顎を取り、上を向かせてキスをした。 「んっ、やめ……っ」 「結月、しよう」 「な、なんだよ急にっ」 「急じゃない。ずっとしたかった。けど、おまえが嫌がることはしたくなかった。どっちも本心だ。……でも、俺の思ってることは伏せて、おまえの気持ちだけ聞き出そうってのは傲慢だったよな。だからもう一度言う。俺はおまえとしたい。けど、おまえがしたくないなら、したくない。どっちも嘘じゃない。おまえが好きだから、おまえ第一になるんだ。やめろって言われても、やめらんねえよ。だって、おまえが好きだから」  アホが書いた作文みたいな主張になった。けれどもう、こうとしか言いようがなかった。不安になるから優しくしないで、なんて主張を真に受けられる男がいたとしたら、そいつは正真正銘のアホだ。  問題は、優しさの方向性である。自分は、結月を傷つけることを恐れるあまり、もっとも重要な結月の意思からさえ目を背けてはいなかったか――。 「頷くか、首を振るかでいい。おまえの本心が知りたい。――今、ちょっとでも俺と触れ合いたいなって気持ちはある?」 「……っ!」

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