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「結月……?」 「な、なんだ」 「ちょーっと、力抜こうか。大丈夫、いきなり奥まで入れないから。ゆっくり、少しずつ……」 「い、言われなくても抜いてるしっ!」 「ほんとに?」  だったらと、また指先に力を込めてみるが結果は同じ。条件反射のように固く門を閉ざされる。  こうなったらと、晃大は表面への愛撫を徹底して再開した。  くるくる、とんとん、もみもみ、ちゅっちゅ。緊張も恐怖心も羞恥心も全て蕩けさす勢いで、あの手この手で窄まりをほぐす。  そうして二十分近くが経ったころ。結月の目がとろんとまどろんでいるのを見て、今度こそは――と、指先に力をこめた。 「んっ!」  ばっと、瞼が見開かれるのよりも先に、光の速さで窄まりが締まる。  ――本能レベルで拒絶されてる……っ⁉  もはや、そうとしか思えないレベルの頑なさだった。  テニスのプレイスタイルにしろ、対人関係にしろ、結月の守備力が人並み外れて高いのはもうよく見て知っている。しかしまさか、その守備力の高さがこんなところでも発揮されようとは思ってもみなかった。見た感じ、意識してやっているわけでもなさそうなのがまた……。 「……予定変更だ、結月。今日は、これは使わない」  晃大は枕元に置いていたゴムを手に取って、ぽいと机の上に放り投げた。 「な、生でするのか……!」 「しねえよ、そんな無責任なこと」  子どもはできずとも、腹を下す危険がある。他人の体に、そんなリスクは負わせられない。 「じゃあ……やめる、のか……? 俺が、上手に力抜けないから……?」  目に見えて傷ついた表情を浮かべた結月を、すかさず抱きしめた。 「違うよ。おまえのせいじゃない。無意識に力がこもるってことは、それだけ、おまえの体がおまえを守ろうと頑張ってくれてるってこと。健康な証拠じゃん」  むしろ、初めからなんの抵抗もなく挿入できるほうが怖いくらいだ。結月は悪くない。 「……」 「けどわかっててほしいのは、俺はなにも、おまえの守備を強行突破して、攻め入ろうってわけじゃないってこと。一緒に気持ちよくなるために、結月自身の意思で、ちょっとずつ受け入れる感覚を覚えていってほしいんだ」 「受け、入れる……?」 「そう、受け入れる」  間違っても、主導権を委ねろという意味ではない。むしろ、セックスにおける本質的な主導権は、抱かれる側にあるということを伝えたかった。男同士である自分たちにどれほどその理屈が当てはまるのかはわからないが、少なくとも、メスとオスの場合はその認識で間違いない。  命の種となる卵子を持つメスが、自らの子孫を強化する目的で優れた精子を選んで取り入れる。オスの性欲なんてのは、その『命を創造する』というメスの能力を最大限発揮するための付随的な本能に過ぎないのだ。メスが子孫を強化する必要がある時期とない時期とで、オスを産んだり産まなかったりする生物までいるのがなによりの証拠である。  要するに晃大は、ゆっくりでもいいから、きちんと結月の意思に基づいて、受け入れてもらえる瞬間を待ちたいのだ。そうでない行為は、たとえ形だけ繋がれたとしても虚しいだけである。

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