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「えー、晃大、今月いっぱいでいなくなっちゃうの⁉」  ネオンライトが光るフロアの片隅、DJが奏でる爆音のミュージックをかき消す勢いで、最近、店に通い始めたばかりの女性客――寧々(ねね)が言う。 「うん、もう別のバイトの採用決まってるから。せっかくシフト訊いてくれたのにごめんね」 「ええ~、めっちゃショックなんですけどぉ……。晃大がいるから通ってたのにぃ……」  バイトを辞めると店長に報告してから早二週間。出勤のたび、口々に惜別の言葉をかけられる日々である。 「御子柴先輩がいなくなったら、絶対女性客減るっすよねぇ……。やっぱ、イケメン手当みたいなのが必要だったんじゃないっすか?」  バイト中にもかかわらず、一緒になって客と話していた魁斗が言い、晃大は苦笑した。 「ホストクラブじゃねんだから」 「みたいなもんでしょ、晃大に限っては」  さらにまた横で話を聞いていた華蓮が言った。みたいなもんとはなにか。 「でもぶっちゃけ、晃大がいなくなったらマジで客減るだろうな~。あたしの知り合いだけでも、あんた狙いで通ってた子が軽く二十人はいるし」 「二十人⁉」  華蓮の口にした数字に、魁斗がぎょっとした表情で繰り返した。 「(うち)一人で~す」  と、さきほど晃大がバイトを辞めることを知って落ち込んでいた寧々が拗ねたようにカクテルを啜る。 「ま、それもあくまで、あたしが知ってる範囲だからね。実際には百人以上ファンいるんじゃないの? てか、新規の子とか、とりあえず一旦は晃大のこと好きになるでしょ」 「一旦なんだ」 「あんた、ワンナイト主義じゃん。女の子のあいだでも、独り占め厳禁が暗黙の了解になってんの」 「そんなのあるんすか⁉」  いちいち魁斗のリアクションが大きい。しかし、そんな暗黙の了解があったことは晃大も初めて知った。  女の子同士の連携って、こんなところでも機能しているのか。さながらメスライオンの群れに招かれたオスライオンの気分である。一夫多妻、ではなく、厳密には多雌一雄。  ――実質俺、公務員じゃね……?  頭悪いけど。都道府県もろくに覚えていないけど。 「ていうか、その新しいバイト先ってマジでどこなんすか? いい加減教えてくださいよ~」 「おまえ口軽いからやだ。絶対言いふらすじゃん」  魁斗は話していて気楽だが、ノリ重視で生きているやつだから信頼には値しない。と、今までも自分は思われていたのだろうが……。 「あ! さては、マジでホストとか⁉ やべー、そしたら絶対金で金でじゃないっすか!」 「しねえよ、就活の時期にそんなこと」 「そのまま就職しちゃったらいいじゃないっすか」 「ない。将来性がない。年とったときどうすんだよ。一生若いわけじゃねんだからさ」 「しょ、将来性……?」 「初めて聞いた単語みたいな顔すんな」  軽く肩で小突いた横で、いやいやと華蓮が首を振った。 「これは、『え、あの御子柴先輩の口から、そんな単語が……⁉』の顔でしょ。晃大、マジ変わったよね。いかにもノリで生きてるって感じだったのに」 「まあ、そろそろ落ち着くころかなと」 「まだ二十じゃん」 「もうすぐ二十一だし」 「大差ないっす」  ちらりと魁斗のほうを見て、おこちゃまは黙ってようなと笑顔で牽制した。

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