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14-2
「彼女、年上? 年下?」
ふと、華蓮に訊かれた。
「いるって言ったっけ」
「いるでしょ」
「まあ」
彼氏だけど。
「一個下、大二」
「前にここで絡まれてた子じゃなくて?」
「前?」
女の子が絡まれているのなんてしょっちゅうだから、一瞬、誰のことかと思った。が……。
――鈴羽のことか。
思い至るなり、ゆるりと首を横に振った。
「違うね。華蓮ちゃん、知らない子だよ」
「へえ。やっぱ、本命はこういうとこには来ない子なんだ」
やや棘のある口調だった。しかしまあ、その通りだ。結月が自分みたいなタイプだったら、多分、自分は結月を好きになってはいなかったと思う。
「――で、俺も変わんなきゃなって?」
「だめ?」
問い返すと、華蓮は肩を竦めた。
「いいんじゃないの、そうするべきって思ったんなら。……けど、今までの晃大を知ってる身からすれば、しばらくは無理してる感が否めないかもね。ま、自業自得だけど」
「く~辛辣~!」
いい加減、魁斗を黙らせたい。
けれど、華蓮の指摘はごもっともだ。晃大自身は無理して結月に合わせているつもりはなく、自分がそうしたいから、そうしているだけなのだが――。
(……不安になっちゃった?)
問いかけに、こくんと頷いた結月を思い出す。結月は晃大が優しすぎて不安だと泣いていたけれど……恋人を大事にするのは、本来、優しさどうこう以前の話だ。そんな当然のことすら『無理しているんじゃないか』と不安にさせてしまうのは、それだけ、晃大のスタートラインが『当然』を下回っていたという証拠でもある。
もとより、信頼なんてのは一朝一夕で得られるものではない。マイナススタートである晃大ならなおさら、しばらくは無理しているのではと疑われたって仕方ない。けれどいつか――今から一年後でも、二年後でもいい。結月が心から、こいつ、ほんとに俺に惚れてるんだなって、呆れるくらい安心してそばにいられるように、一日、また一日と信頼を積み重ねていくしかない。
「あーあ。あたしもそろそろナイトクラブ卒業しよっかな。もう完全に脈ナシって感じだし」
「え、狙ってる男いたの?」
華蓮は一度寝て以降もかなりあっさりしていたし、来るたびにいろんな男と絡んでいるから、ここには遊びで通っているだけなのだと思っていた。
「言ってくれれば斡旋したのに。てか、華蓮ちゃんならイケるっしょ。今日来てないの? 来てるなら、あいだ持つよ。てか誰? 俺の知ってるやつ?」
「御子柴先輩、御子柴先輩……」
ツンツンと、魁斗に腕をつつかれて振り向くと、小さく首を横に振られた。
「え?」
「じゃ、このあとあたしとホテル行く?」
くいと、赤いカンパリソーダの入ったグラスを傾けられ、晃大は目を瞬いた。
「え、行かないけど」
華蓮はため息を零し、短いスカートを翻してその場を去ってしまった。
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