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第7話 デートをしようか

 (?)を終えた次の日の朝。  いつもより――少しだけ眩しく見える太陽に見守られながら、俺たちは宿泊場を後にした。   ご丁寧に教会宿舎に送ってくれた彼が、俺の身体を労りながら「次の休み、街に出掛けないか?」なんて言い出した。  燦々とした光を反射する、金色の瞳をじっと見つめながら――俺は、噤んだ唇をゆっくりと開いた。  そして、長い長い5日間が過ぎ去り……  ニヤニヤが止まらないエイベルに「行ってらっしゃいませ」と見送られながら、俺は自室を後にした。  お世辞にも十分とはいえない採光の廊下。  歩く度にギイッと木の板が鳴るのに、住み始めた当初は中々慣れなかった。 「ったく……エイベルの奴、気合い入れ過ぎじゃないか」  白壁の家々が林立する窓に映る己の姿を見て、思わず小さくため息が漏れる。  白い髪の毛は、ふわっと毛先を遊ばせるようにセットされ、詰襟部とふわっとした袖口にはフリルがあしらわれた黒いシャツ。 「……可愛すぎだろ。これで短パン履いたら、どこぞの貴族の坊ちゃんじゃん……」  襟に巻かれた、金色のリボンを指で軽く引っ張りながら、黒いズボンの裾から見え隠れするショートブーツの踵を、カツンと鳴らした。  「エイベルはデートだって騒いでたけど」  ふと、窓の向こうで、石畳の上を若いカップルが仲睦まじく寄り添いながら歩いている。  あの場で返した言葉は『別に構わないけど』だった。  何故って……特に断る理由も思いつかなかったし、それに――  可愛げなんて微塵もない返事に、彼は嬉しそうに微笑んだ。  腕を絡ませて歩く彼らに一瞬、自分たちの姿を重ねてみたが、どうにも違和感が拭えない。  「いや……偽恋人になった途端すぐ事に及んだんだ。そんな甘い関係(モノ)じゃないだろ」   「求婚避けに」なんて言ってたけど、本音は都合よい発散相手が欲しかっただけなんじゃないだろうか。  それなら大金を渡して、というのも頷ける。  煌びやかな職柄や家柄がある以上、処理行為にも気を遣わなければならないのだろうし。  腰の辺りを這う色っぽい手つきを思い出し、ゾクッと昂る身体を両手でギュッと抱き締め鎮める。  にしても……すごく、良かった。  これまでどんだけ場数踏んだんだろ。あとなんか、めちゃくちゃ優しかったし。  あの慈愛に満ちた手で、一体どれだけの人が慰められたのだろう。  それを想像すると、何とも複雑な気分にはなるが、いまはそれよりも「偽恋人とは何だ」が頭の中を占拠していた。 「……処理係。もう、そういう事にしておこう。それが何か、1番しっくりくる」  小さく息を吐く俺の耳に、「ボーン」と鈍い音が飛び込んでくる。 「あ、やべっ……時間ッ」  廊下の端に置かれたウォールクロックが「遅刻するぞ」と告げている。  「もういいや」なんて思考を放棄した俺は、そのまま1階へと階段を駆け下りて行った。  強い陽射しの入るエントランスに向かうと、そこには1人の男性が腕を組み壁に凭れかかっていた。  ラフな白シャツのボタンは2つほど開かれ、そこに垣間見える隆々とした胸筋が、彼の色気を更に加速させている。 「馬車で待っていれば良かったのに」  観音開きのドアの向こうには、黒色の馬車が停まっているのが見える。てっきり彼は中で待っているものだと思ったけれど。 「1秒でも早く、お前に会いたくてな」  そう言って彼は、大きな手を俺に差し出した。  なんでそんなに頬がゆるゆるしてるんだよ。 「狭い敷地なんだから、中と外で大した差はないだろ……」  反射で伸ばした手は一瞬、宙でピタリと止まる。  いや、俺……なに素直に握ろうとしてんの。  しばらくそこで彷徨っていた指先に、スリスリと彼の指の腹が触れる。  その動きに誘われるかのように、ちょんっと手を乗せれば、ギュッと力強く握られた。 「えっ、と……えっと」  ここから、どうすれば良い?  エスコートされる側の気持ちも動きも分からんが。  オロオロと視線を泳がす俺を暫く見ていたジルが「ぷっ」と吹き出す声が聞こえる。 「まぁ、普通に腕引かれる(エスコートされる)だけじゃつまらないよな?」 「は、何言って――ちょ、ちょっとぉぉ!?」  ニヤリと微笑んだ彼の顔を見た瞬間、俺の身体はふわりと宙に浮き上がった。   待って、これ、お姫様抱っこされてるぅぅ!?  何やってんだよぉぉッ!! エスコートとかマナーとかどこに置いてきた公爵子息よ!! 「今日は2人きりなんだ。別にこうして馬車に連れて行っても誰も文句を言やしない」 「俺が! 俺が言うだろぉぉぉ」  反抗も虚しく、彼に抱き上げられたまま、俺は馬車の前まで運ばれて行ったのだった。  馬車の中はまるで、美しい夜だった。  天井まで深い藍色に彩られた内装は、満月を隠した空のよう。  キルティング加工の施された座り心地の良い座席は、目を閉じるとそれだけで天まで昇れそうな気分になる。  俺が「すげぇ」なんて感嘆の声を上げていると、隣から伸びた逞しい腕が、がっちりと肩を抱いた。 「良いだろ? お前の為に特別に誂えた馬車だ」 「はぁッ!? ……まさか新しく買ったのかよ……この日の為に?」 「勿論。恋人(お前)を乗せるんだ、別におかしい事じゃないだろ」  ジルはキョトンとした面持ちで首を傾げている。が、対して俺は開いた口が塞がらない。 「おかしいだろ」  地底より出づる程の、深ーい溜め息が俺の口から吐き出された。  まさかこの男……恋人ができる度にこんな事してんのか? 「……ジルってさ、馬車何台持ってんの?」 「これと、仕事用だけだな」 「……!?」  ってことは、別れる度に処分ってか!? 勿体ないにも程があるだろ!! 「環境には優しくあれ、物は大切にな。ジルレスター・ダレン・ネイサンよ……」 「なんだ、いきなり。こんなところで聖人様のありがたいお説教か?」   「はははっ」と聞いた事のない笑いに、俺は声の方へと顔を向ける。  そこにあるのは、いつもの厭らしい笑いではなく、カラッとした爽やかな笑顔。  わ、笑った……   歯を見せて笑う彼に、視線が奪われる。  こんな風に、笑うんだ――  トクンッ、と、胸の奥が音色を奏でる。  ぽかんと口を開けたまま呆然としていると、段々と彼の顔がアップになって……次には、唇が「ちゅ」と音を立てて塞がれていた。 「――ッ! ちょっとジル、ここ馬車の中ッ」  グイッと彼の胸を手で押し、勢いよく顔を背ける。  なんで……顔あっつ! 別にキスなんて何度もしたんだし、今更なんでこんなドキドキするんだよ……  小さく唸りながらギュッと瞑ると、耳にフッと吐息が掛かる。 「目の前にこんなにも可愛らしい天使がいるんだ、何もしない方が失礼だろ?」  そんな言葉を言うジルはもう、俺のよく知っている彼だった。  さっきの好青年どこに行った!? 返してくれッ……!  不満を垂らそうとした唇は、言葉を零す前に再び塞がれた。 ◇◇◇  漸く辿り着いた場所は、街の中心街だった。  レンガ造りの通りには所狭しと路面店が立ち並び、流行りの服やアクセサリーがウインドウ越しに飾られるオシャレな場所。  そんな中、唇がもうふやける寸前でどうにか彼を引き離し、馬車から転がるように出た俺。  後ろで「まだ足らないが」なんて不満気な顔を隠さないジルに「俺、腹減った。飯食わない?」なんて話をそらし、ヴィクターが薦めたというレストランに向かったのだが――     「アンタんとこの従者……エグい趣味してんだな」 「思った以上に奇抜な内装と内容だったな。流行りで、尚且つ味が最高な店をヴィクターにピックアップさせたんだが」    「ありがとっクマ~!!」と真っピンクの着ぐるみクマに軽く会釈をし、店に似つかわしくない俺たちは、そこを後にした。  相も変わらず休日を楽しむ人々が溢れる石畳の道を、少しばかり頬を痩けさせながら歩き始める。  ジルが「あそこに行こう」と選んだ店は、間違いなく異世界だった。  目がチカチカするほどの、ショッキングピンクな壁で覆われた店内。  「……来る場所、間違えましたー」なんて後退りする俺たちを、原色の着ぐるみクマにガシッと手を掴まれ、引き摺られるように席へと案内されたのだった。 「いや、食事はまじで美味しかったよ。でも……あぁ、ドギついピンクの巨大クマが夢に出てきそう。目がチカチカする」  確かに、店内は若者たちでほぼ満席だった。流行りの店で間違いないのだろう。味は文句なしだったし。  ジルも全面同意なのだろうか、隣で大きく頷いている。 「味に関しては同感だ。……鶏肉のグリルに七色の原色ソースがかかってるのを見た時は、どうしようかと思ったがな」 「あっはっは!! あれ見て固まるジル最高だったなー!」  ナイフとフォークを持ち、なんとも言えない難しい表情で固まるジルを思い出し、俺は思わず「ふはっ」と吹き出した。 「うるさいな」  ジルは口元を手で押え、ふんっとそっぽを向いた。  真顔で食べ続けてたけど、実は恥ずかしかったのか?  いつも食えない表情の彼が、頬を赤らめるのを目撃し、俺はニンマリと口角を上げた。  「次の典礼(ミサ)は、あの色の(トラウマ)クッキーでも焼くかぁ~」 「ほう、言ったな。貰いに行くから覚えておけよ」 「なに、子供たちに混ざってもらいにくんの? 面白すぎ」  さすがに想像でも笑える。  俺はもう耐え切れずに、「あははっ」と声を上げて笑った。 「――ッ……」  思わず目尻に浮かんだ涙を指で拭っていると、ジルの切れ長の目が大きく開き、ジッと俺を捉えた。 「なに? 俺の顔に何か付いてるか?」  思わず立ち止まり首を傾げる。するとジルも同じように足を止め、ふっと俺とは反対の方向に顔を向けた。 「いや――、カフェで食後のコーヒーでも買って来よう。そこのベンチで待っていてくれ」   ジルの向いた先には、確かにオレンジ屋根のカフェがある。  俺の返事を待たずして、彼は顔を見せる事なく店に向かってしまった。 「なんだよ、どうしたんだよ……」  ぽかんと、その背中を見守る。  その時ふわりと吹いた柔らかい風が、彼の黒い髪を揺らす。  それまで下に隠れていた頬が、少しだけ赤らんでいるのを……俺は見逃さなかった。 「――ッ!? どのタイミングで……?」  心当たりはない。何なら彼が口にする色気づいた言葉の数々みたいなの、俺は言った記憶ないし。 「……ほんと、わかんない奴だな」  路肩に置かれた水色のベンチへと腰掛け、体温の上がる頬を両手で抑えた。 「遅いな……」  目と鼻の先にあるカフェで買ってくるとは言っていたけど――もう随分と待っている気がする。  何かトラブルでもあったのか?   ふと、彼の消えた方向へと視線を向けると、見慣れた背の高い美丈夫が幾人もの女性に取り囲まれていた。 「なる、ほど?」  女性たちは目をキラキラと輝かせ「おひとりですか?」「この後のご予定は?」等と口々に言いながらジルに攻め寄っていた。  ◇◇◇  コーヒーの入った紙袋を手に持ちながら、俺は大きな溜息を吐いた。  日中出かけるのは、ラキシア王国(ここ)に帰還して初めてだったが――思いの外厄介だな。  「おひとりですの?」「この後のご予定は?」と取り囲む女性達を一瞥し、空いた手でクシャッと頭を搔いた。  自慢じゃないが、こんな状況に置かれるのは慣れたものである。だからと言って、嬉しいかと聞かれれば答えは「NO」のひと言に尽きる。  ――興味が無いんだよ。お前ら(アイラ以外)、全てがゴミに見える。  ジワッと心の奥に黒い霧が掛かった時……ふと、先程の、アイラのくだけた笑顔が脳裏に浮かぶ。  「可愛かったなぁ。やっぱりお前は最高だよ……アイラ」  ニヤリと歪む口の中で小さく呟いた時――遠くから「なにすんだよ!」と叫ぶ声が耳に届いた。   ◇◇◇  女性の群れから動く様子のないジルを見ながら、思わず頬を引き攣らせた。  まぁ、当然と言えば当然の光景なんだろうけれども。 「さすっが、おそろしい程にモテるじゃん……別に偽の恋人(おれ)なんて、必要ないだろ」  苦笑交じりにそう呟いた時、トントンと後ろから肩を叩かれた。  何事かと振り向いた先には、見るからに軽そうな若造が2人。 「おねーさん、1人ですか?」 「うわっ、めっちゃ美人……俺らと遊びに行こうよぉ」  ――こちらもこちらで、面倒なのが湧いて出たじゃないのよ。 「1人じゃありません、おねーさんでもありませんお帰りください」 「え、お兄さんッ!? てか聖人様?」 「噂の天使様!! 最高じゃん。ねぇ俺らと遊ぼうよー楽しい事しよー」  冷たく言い返しそっぽを向くと、肩を掴んだ手の力がグッと強くなる。 「いった……やめろ触るな話しかけん……触らないでいただけますかコノヤロウ」  ……だめだ、聖人フェイスなんて出来るわけがねぇ。  フツフツと沸き上がる怒りに、ぐっと拳を握り締めた瞬間だった。  「いいぞ、遊んでやろうか」  それはそれは冷たい声と共に――俺の肩を掴んでいた男の首筋に、スっとナイフが充てられた。 「へ、へ!?」  首元の冷ややかな感触に、男は間抜けな声を上げながらスっと両手を上げる。 「やれやれ、非番だというのに……街のゴミ清掃が必要か。悪いな、もう少し待っていてくれ」  ニッコリとイイ笑顔で微笑んだジルは、コーヒーの入った紙袋を俺に預ける。 「ま、まぁ構わないけれど……」 「さすが、優しいな俺のアイラは――で、お前らは何して遊びたい?」  今一度、俺に優しく微笑んだジルは、次の瞬間……完全に光を無くした瞳で男たちを睨み付けた。 「ヒッ……て、ていうか団長?」 「お、お、お疲れ様です」  おや、まさかの知り合いの御様子。  凍りつくオレンジ髪の遊び人男は両手を上げて引き攣り笑いを浮かべ、黒髪をひとつに纏めた、一見誠実そうな彼は――立ったまま気絶してない?  「団長」なんて言っていたし、騎士団の人間なのだろうか。  目を見開き、暫く2人を見つめていたジルの顔が――急に、それはそれはイイ表情へと変わった。 「ルークに、ネル……そうか、お前らか! 良かった――それなら遠慮なく〇〇(ピーッ)出来るな」  にっこりと、光属性全開の笑顔を浮かべるジルの目は全くと言っていいほど笑っていない。 「ちょ、嘘でしょ!! ごめんなさい許してください……さ、さすが天使様! 格別な美しさっすね! 思わず声掛けたくなる……これはもう、彼の美貌が罪でしょ」  ジルの手中にあるナイフが、今一度、ルークと呼ばれたオレンジ髪の男の首へと押し当てられる。  どうにか必死に言い訳しようとしているけれど――全く逆効果になってないか。  流石にそれを察したのか、二人は「ごめんなさァァあい」と泣きながら彼らは脱兎のごとく逃げ出した。  逃げた男たちをぼんやりと見つめていると、急に片手が強く引かれる。  その勢いで思わず立ち上がると、次の瞬間――俺の身体は彼に強く抱き締められていた。 「大丈夫か? 変な事されなかったか?」 「へ、平気だって……俺、男だしッ」 「関係ない」   彼の手が、まるで俺の安否を確かめるように、髪、頬、背中、腰、と順に優しく触れる。 「……目立ってる、ジル……」 「見せ付けてるんだ。不埒な考えの者を一掃する為にな」  その仕草が、言葉が、何だか擽ったくて……紅潮する頬を髪で隠した。  ◇◇◇ 「だから大丈夫だって――んッ、ぅ……」 「ダメだ。俺の天使に他者が触れて、正気で居られない」 「――ッッ!! い、いや……その、肩掴まれただけ……」  馬車へと戻り、さて帰るのかと思いきや――車内に乗るやいなや、俺の身体はフワフワの座席に押し付けられた。  そこに覆い被さったジルは、俺の衣類のボタンを引き契るように開き、首元から鎖骨に掛けて唇を這わせている。 「そもそも、それが許せない」  瞳孔が開いた瞳が、じっと俺を捉えた。 「んぁッ……そこ、だめ……」  ズボンも下着も剥ぎ取られ、気が付けばシャツ1枚になった俺。彼の膝の上に乗り大きく股を開いて、向かい合わせに座る彼の腕にギュッとしがみついていた。  ジルの逞しい腕が俺の腰に強く回され、グッと身体を引き寄せられると、エキゾチックな――下腹部がズクっと疼く淫靡な香りが俺にまとわりつく。  それだけで全身にもどかしい熱が襲う。  ジルの匂いって、クラクラして脳が痺れる……だめ、馬車の中で……こんな卑猥なこと……  すぐにでも理性を食い尽くしそうになる本能を、どうにか押し留めた。  昂る感情が、俺の目尻に涙を浮かべる。  「ダメダメ」と首を振り、彼を見上げるも――ジルはその光景を愉しむかのように口元を歪めていた。 「こんなに勃たせて、何がダメなんだ?」  グチっと音を鳴らしながら扱かれるアレは、軽く痙攣しながら天を向いている。 「はずかし、……から……ッんっ……!!」 「好きだろ? 扱きながら先っぽ弄られるの」  ジルの言葉通りに動く指が、俺のをギュッと握ったまま、にちゅにちゅと先端を撫でた。  同時に、薄い唇が俺の首筋に吸い付く。  ぬるぬるしたものが肌に這うとビクビクッと身体が震え、二の腕を掴む指に嫌でも力が入る。  どうしよ……ジルが舐めると、腰がゾワゾワして……それだけでイキそうになる……  爆発しそうな熱が欲棒に集約し始める。  次の瞬間、首筋に何か硬いものが当たり、「なんだろう」なんて蕩けた脳内で考えていると、ガリっとそれが肌に思い切り噛み付いた。 「――――ッッ!! いったぁ……ひっぁっ、ぁあああぁあっ!!!!」  ビクンッと身体が大きく跳ねる。  反射で俺の下腹部は――思い切り熱を吐き散らした。 「今日はこれからが本番なんだが」 「……ふ、ふへ……?」  ぐったりと彼に凭れかかり、肩をで息をする俺の鼻腔に、甘い花の香りがふわっと香る。  な、に……? ジルの香りとは、ちがう……  匂いの元を手繰ろうと、少しだけ身体を起こす――が、その瞬間、想像もしない場所が知らない感触に襲われる。 「時間はたっぷりある。存分に楽しもうな」 「待って、まって……ジルどこ触って――」  ジルの両手は俺の腰に回ったまま。  その右手が、あ、穴を、触って……?  ツンツンと秘部を突かれると、反射でキュッとそこは締まる。彼の指がゆっくりと解すように、クチュっと撫で回した。 「俺のをココにぶち込んで、腹の奥の、更に奥まで掻き回して――最後はひとつになろうな。今日はその準備をしようか」 「――ッ!! む、むり……ぜったい、はいんない……」  飢えた彼の目は、ギラっと光っていた。  そもそも尻に、そんな機能備わってないだろ――ッ!!   面白いくらいに顔面から血の気が引いていくのがわかる。  すっかり冷えた唇へ熱を分け与えるように、暖かいものが重なる。 「触って、アイラ」  彼の腕にしがみついたまま手が、彼の左手にグッと下へと引っ張られた。  すると、いつの間にやらベルトを緩めズボンの前を開き、取り出された既に臨戦状態のオスが、俺の手に吸い付く。  重なった指が、その熱棒をゆっくりと握らせる。  すご……俺のと、全然大きさも硬さもちがう……  手のひらで、そのカタチを確かめる。指先で、根元から先端に向かい輪郭を確かめると、ビキッと血管が更に浮き彫りになった。 「んぅ……ふっ、ん……こんなおっきいの、むり……」 「煽るよなぁ。……今日はまず、ココの快楽を覚えような。だからアイラは、その可愛い手とアレで俺をイかせて?」  ズリッと彼の欲が、再び頭を擡げ始めている俺のアレを|突《つつ》く。その瞬間、つい先日の快楽を思い出した身体がブワッと熱をぶり返す。  悦楽の言いなりになった身体が、2人のモノを合わせ掴み、ズリズリと一緒に擦り始めた。   「はっ、……んぁ……ぁぅ……」 「すごいな、ナカ……吸い付いてくる」  入口を弄る指が、どんどん奥に入ってくる。  解すよう丁寧に襞を撫で回す長い指を、キュッキュと締め付ける度、耳を舐め回している彼の口から吐息が漏れた。  へんなかんじ……する……なんかもどかしい……  拭えない違和感から、もじもじと腰を動かした――次の瞬間、身体中に、ビリビリッと電気みたいなものが駆け抜ける。 「んぁぁッ!? な、な、に……いま……」 「っ……あぁ、ココか?」  愉しそうな声が耳元で聞こえたかと思うと、ジルの指がナカで激しく動き始める。 「あッんぁ゙――ッッ、だめ、だめそこ……んぅぁああ」  何が起きてるのか分からない。  ただジルの指が、ナカぐっぐっと押す度に、感じたことの無い甘い疼きが全身を襲う。  なにこれ、力抜ける……やばい、アレ擦られるより気持ちいい……?  未知の快楽を求め、無意識に腰が「もっと」と動く。 「腰振って、やらしいな。前より後ろの穴弄られる方が好きなんだな」 「ちがうちがう」と必死に首を振るも、すっかり気を良くしたのであろうジルは、更に指を増やす。 「ひぅっ……あ゙ッ、んッッ――はっ、は……」 「もっともっと乱れて、堕ちた姿を俺に見せて?」  2本の指が不規則に、そのコリッとした部分をバラバラと擦ったり挟んだりすれば、堪らずビクビクッと全身が跳ねる。  口角に唾液を垂らしながら「はぁはぁ」と荒い息をする口は塞がれ、何かを促すように彼の腰がグッと押し出される。  それが「手が止まってる」という訴えだと気が付いた俺は、蕩けそうな舌を絡ませ合いながら、ソレらを握った両手を上下に動かし始めた。  ジルの、めちゃくちゃあつい……。先っぽもヌルッとして……興奮、してる……  チラッと薄目を開けると、そこには苦しげに眉を寄せる極上の顔。  ジル……きもちよさそう……おれ、|仕事《処理係》ちゃんとできてる……  それを見ているだけで、下腹部がズクズクと痛いほど疼き、必死に両手を動かす。  こんなジル見られるなら……処理係もわるくないかも……  すると背中を支えていた片手が、グッと後頭部を掴み、もう息ができない程に口内がジルの吐息と唾液で満たされる。 「ぁあっ、んぁぅ……も、い、く……」  ナカを擦る動きが一段と強くなれば、チカチカと目の前に星が飛び始める。 「あぁ……一緒にイこうな。愛してる……可愛い可愛い俺のアイラ」  2本の指が内部を抉ると同時に、俺の手もギュッと2人の愛棒を強く握り合わせる。 「ぁあああぁ!! んぁぁッ……ッッ――――!!」  腰から頭の先へと走る、激しい快楽。  少しだけ出来た口の隙間から、あられも無い声を上げ、ガクガクと身体を震わせ……すると彼の低い唸り声も同時に口内へと流れ込んだ。  熱い液で互いの身体を濡らし、指を抜かれた秘部は、喪失感からクパクパとを求めるように収縮する。 「――これからもっと、卑猥な(俺好みの)身体になっていこうな」  こんなの、こんな気持ち良いの、俺知らない。  愉悦に浸る、の瞳を見ながら……そのままぐったりと彼に凭れかかった。  すると、まだ熱の引かぬ頬を、彼は優しく撫でてくれる。    カラダ……ジルに……変えられていく……    その心地良さに、俺はゆっくりと瞼を閉じた。  

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