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第13話 躾という名の蹂躙

帝都ガルドラを包む春の陽気は、この分厚い石壁を越えてくることはない。 シュハールの暴虐とも呼べる情事のあと、カーツは再び、静まり返った私室で独り、事切れたように横たわっていた。 事後の身体は重く、自ら施した準備と、それ以上に激しく彼を貫いた王の熱情が、身体の芯まで痺れさせている。 昨夜、シュハールは去り際に、その耳元で氷のように冷徹な宣告を残した。 「カーツ、明日からは『準備』が不十分であれば、相応の仕置きを課す。いつまでも客人扱いで甘やかしてはやらない。俺が来たときには、いつでも最上の状態で俺を迎えろ。……しっかりやるのだな」 その言葉が、今のカーツの心に、首の鎖よりも重く圧しかかっていた。 カチャリ、と扉が開き、あの灰色の世話係が入室してくる。 男は床に伏せるカーツを一瞥することもなく、慣れた手つきで鎖を壁から外すと、浴室へと連れて行った。 湯船に浸かり、他者の手で身体を洗われる。 かつては一国の騎士団長として、戦場で泥にまみれることはあっても、このように人としての矜持を奪われたまま、無力な「モノ」として磨き上げられることはなかった。 (食事は日に三度与えられ、毎日こうして身体を清められる。……傷も癒え、肌の艶さえ戻りつつある……) それは、敗軍の将として受けるはずの凄惨な拷問とはかけ離れた、過剰なまでの恩寵だった。 カーツの誠実すぎる魂は、その不気味なほどの「厚遇」に、いつしか言いようのない負い目を感じ始めていた。 「生かされている」という事実。その恩義に応えるためには、主であるシュハールの望み通り、完璧な奴隷として振る舞わなければならないのではないか。 ……そう思わされることこそが、シュハールが仕掛けた最も深い罠であるとも気づかぬままに。 浴室から戻ったカーツは、与えられた白い布を肩に掛けた。 時計の針が、王の訪れる時刻を刻々と刻んでいる。 (やらなければ……仕置きを避けるためではなく、命じられたからには、果たさなければならない……) 騎士としての「規律」が、今は「隷属の作法」にすり替わっている。 カーツは震える指先で、再び香油の瓶に手を伸ばした。 自ら布を肩から落とし、冷たい空気の中に肢体を晒す。そして跪き、教えられた通りに、自らの内側に指を沈めた。 「く……っ、あ……」 己の指で、己を解す。その行為のたびに、誇りが剥げ落ち、官能の泥に塗りつぶされていく感覚。 丁寧すぎるほどに時間をかけ、王を受け入れるための「器」を作り上げていく。だが、騎士としての頑なさが残るせいか、あるいは恐怖のせいか、どうしても内側の筋肉は強張ってしまう。 カツン、カツン。 冷徹な軍靴の音が響き、カーツの心臓が跳ねた。 扉が開く。シュハールは王としての威厳を纏いながら、跪くカーツの前に立った。 「さて……『検分』だ。お前の忠誠の証を見せてもらおう」 促されるまま、カーツは震えながら四つん這いになり、自らの手で成果を晒した。 シュハールが手袋を外し、剥き出しの指でそこをなぞる。 「……硬いな」 その一言に、カーツの背筋が凍りついた。 「あれほど言い聞かせたというのに、この程度か。お前はまだ、俺に抱かれることを拒んでいるようだな」 「ち、違います……っ、私は、ただ……っ!」 「言い訳は無用だ。……教育が必要なようだな。カーツ、これがお前への仕置きだ」 シュハールは無造作に、寝台の脇にあった革の紐を手に取った。 抗う間もなく、カーツの両手は背後で固く縛り上げられ、上半身を反らした姿勢で固定される。 さらに、シュハールが取り出したのは、美しい翡翠に精巧な細工が施された道具だった。 細工は見事なものだったが、カーツは瞬時にその用途を理解してしまう。 「ひ……っ、いや、それは……!」 「自分では広げられぬというのなら、俺がいない間も、これに躾けてもらうしかない」 「ああッ! 待って……ください、陛下、あがっ……!」 容赦なく、異物が強引にねじ込まれた。 解しきれていなかった内壁が無理やり押し広げられ、カーツは激痛と、それ以上に悍ましい圧迫感に悲鳴を上げる。 その入り口に施された蓋が、彼が自力で吐き出すことを禁じるように、ぴたりと閉じられた。 「その姿のまま、朝まで過ごせ。……次に俺が来たとき、それがお前の身体の一部のように馴染んでいることを期待しているぞ」 シュハールは絶望に喘ぐカーツの頬を一度だけ愛おしそうに撫でると、翻って部屋を後にした。 残されたのは、手足の自由を奪われ、恥辱の楔を打ち込まれたまま、薄暗い部屋で震え続ける、かつての英雄の姿だった。

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