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第15話 陥落の閾、帝王の腕の中で
夜の帳が下りる頃、部屋の空気は重く、甘美な緊張に満たされていた。
かつて「ノルズガルドの盾」と謳われた騎士カーツは、今やその誇りを、自ら施した「準備」の香油と共に溶かし去ろうとしていた。
カチャリ、と正確なリズムで刻まれる軍靴の音が扉の前で止まり、鍵が開く。
入室してきたシュハールは、外套を脱ぎ捨てると、獲物を値踏みするような黄金の瞳をカーツに向けた。
「さて……検分の時間だ。カーツ、成果を見せろ」
その低く響く声は、もはや抗うことのできない神託のようにカーツの鼓膜を震わせた。カーツは震える膝をシーツにつき、屈辱に顔を染めながら四つん這いの姿勢を取る。首の鎖がチャリと音を立て、彼が逃げ場のない繋がれた存在であることを強調した。
「……っ……」
「どうした。もっと腰を上げ、しっかり広げて見せろ。お前が今日、どれほど熱心に俺を待っていたか、その身で証明するのだ」
シュハールの無慈悲な命令が飛ぶ。カーツは唇を噛み締め、涙を浮かべながら、震える両手で自らの臀部を掴み、左右に割り開いた。一糸纏わぬ肢体。白銀の髪が背中にこぼれ、露わになった秘所は、自らの指で執拗に解し続けた結果、痛々しいほど赤く、そして潤んだ熱を帯びていた。
シュハールが寝台に腰掛け、剥き出しの指先でそこをなぞる。
「……ほう。昨夜の仕置きが効いたようだな。実に柔らかい。答えろ。どう準備した? 自分の指で何をしたのか、詳しく説明しろ」
言葉に詰まる。そんな恥辱に満ちた説明など、死んでもしたくない。だが、言葉を濁せば昨夜の翡翠の楔が、あるいはそれ以上の「仕置き」が待っている。その恐怖と、心の奥底で芽生え始めた歪んだ従順さが、彼の喉を抉じ開けた。
「……あ……っ。……指に、香油を……つけて……。まずは、入り口を……陛下を、受け入れられるように、円を描くようにして……解しました。それから……陛下が、入る時に……締め付け過ぎないように……中まで指を入れて……何度も、何度も……掻き回して、広げました……っ」
「指は何本使った?」
「……っ、三、本……です。三本の指で……解しました……」
「三本か。随分と熱心に広げたものだな。その三本の指を、俺のモノだと思って解していたのか?」
「っ……あ……っ、はい……陛下……!」
吐き出した言葉そのものが毒のようにカーツの心を焼く。しかし、恥ずかしい告白をさせられたことで、彼の身体は内側から沸騰するような熱を帯び、肌は淡い桜色に染まっていった。
「よく言えたな。褒美をやる」
シュハールは満足げに目を細めると、カーツを組み伏せるようにして、一気にその「準備」された場所へと自身を沈めた。
「ああぁぁッ!!」
貫かれる衝撃。だが、昨日までのような「破壊」の痛みではない。解し抜かれた内壁は、吸い付くように王を受け入れ、その熱を余すところなく享受していた。背後から激しく打ち付けられるたび、カーツの視界は火花が散ったように白く染まる。
シュハールは一度、絶頂の間際で自身を抜き去った。
急激な喪失感に、カーツが喉を鳴らして虚脱した吐息を漏らす。だが、休息は与えられなかった。シュハールはその強靭な腕でカーツの身体を容易く反転させ、仰向けに寝台へ押し沈めた。
視界が激しく揺れ、次に焦点が合ったとき、そこには征服者の猛々しさを湛えたシュハールの顔が至近距離にあった。
「逃げるな。誰が貴様の主か、その瞳にしっかり焼き付けろ」
シュハールはカーツの逞しい両足を自身の肩に易々と担ぎ上げ、剥き出しの執着を込めて、再びその奥底へと侵入した。正面から向き合うことで、二人の肉体は隙間なく密着し、カーツは自らの身体を蹂躙する王の脈動を、肌を通じて直接感じ取ることとなった。
「あ、が……っ、ひ、あぁっ……!」
深々と、魂の境界まで抉り取るような突き上げ。正面から抱かれることで、カーツは己の無様な姿を隠すことができなくなった。涙に濡れた瞳も、恥辱に歪む口元も、すべてがシュハールの黄金の瞳に晒される。
シュハールは、カーツの腰を逃さぬよう、大きな手で骨が軋むほど強く掴み、執拗に最奥を突き上げた。王の舌が強引に侵入し、カーツの悲鳴さえも吸い取っていく。肺の空気が奪われ、視界が白く明滅するなかで、カーツは己の存在がシュハールという巨大な熱量に溶かされ、吸収されていく錯覚に陥った。
「お前はもう、俺なしでは完成せぬモノになった。……認めろ、カーツ」
「っ、あ……あ、ああああッ!!」
最後の一突きが、カーツの最も敏感な一点を射抜いた。耐えきれぬ愉悦の奔流が溢れ出し、カーツは王の首にしがみつき、獣のような鳴き声を上げながら激しく果てた。
いつもなら、情事が終わればゴミのように床へ転がされる。
だが今夜は違った。シュハールは、汗に濡れ、小刻みに震えるカーツの身体を離さず、そのままシーツの上へと横たえた。
「……陛下……?」
「今夜は、そこで丸まっている必要はない。……このまま俺の腕の中で眠れ」
背後から力強い腕が回り、カーツの身体を包み込む。
純潔を貫き、ただ剣にのみ身を捧げてきたカーツにとって、こうして誰かの体温を感じながら眠るなど、これまでの人生で一度としてなかったことだった。
重なり合う肌の熱。耳元に届くシュハールの静かな鼓動。
これほどまでに自分を辱め、すべてを奪った男の腕の中が、今の自分にとって唯一の、そして最も安全な「居場所」であるかのように思えてしまう。
(恐ろしい……。私は、この熱を……拒めない……)
絶望的な自覚がありながらも、与えられた温もりに安らぎを感じてしまう自分を止められない。カーツは、帝王の腕の中で、初めて鎖の重さを忘れて深い眠りへと落ちていった。
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