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ガチ恋勢

都内のタワーマンションの低層階に構えるクリニックの戸締りをそそくさと済ませると、俺は足早にマンションのエントランスを抜けた。 看護師や事務スタッフとの雑談は、情報共有も含まれているので日々大切にしているが今日は話にオチをつけて無理やり終わらせた。 不審に思われなかっただろうか。 多少の申し訳なさを抱えながら、俺は地下駐車場に停めてある自分の車に飛び乗った。 「はぁ…はぁ…疲れた」 周りをキョロキョロと見渡し、誰もいない事を確認したら、即座に車のドリンクホルダーの下の収納スペースを豪快に開ける。 「あああああっっ!!暖ちゃま〜!!んちゅっ!!ちゅっ!!たぁだいまぁ♡」 アクリルスタンドを手に取ると、俺は豪快にブチュブチュ音を立てながらキスを繰り返す。 ついでに、黄色のカードケースに入った写真も取り出して同じように口つけていく。 「ふぁぁん!!暖ちゃま!!かぁ〜いい♡さみちくさちてごめんねぇんっ」 カードケースに閉じ込められている彼は、半開きの口をこちらに向けて潤みを含んだ瞳で俺を誘惑してくる。 こんなちゅるちゅるなお目目、どういう構造なんだろう。 あぁ、やはり眼科になれば良かったかな。彼の涙を採取して研究したい。 きっと、普通の人間には含まれないラブリーきゅるきゅる成分がふんだんにはいっているはず。 あぁ…涙の採取はどうしよう。 俺が寝転んで…彼に俺が気持ち悪くて涙を流してもらって… 『おっさん…キモすぎ…いくらαだからって…僕のガチ恋ヲタなんて…無理…生理的に…』 暖くんの事好きすぎて気持ち悪いαでごめんなさい…。 だから…上からその涙を…ピチョンと口に… 「いや!飲んじゃ駄目だ!採取するならスライドガラスに入れるべきだろう!」 自分が発した大きな声に驚きながら、我に返った。今月何回目だろう。 ふと、目線を股間に落とすと膨らんでいた。 「…死にたい」 自分の情けない欲望に頭を抱えながら、ドリンクホルダーに閉まっていた私用のスマートフォンを取り出した。 待ち受けももちろん彼だ。 黄色くてフワフワの髪の毛。パッチリ二重の近くにある高い頬には健康的なそばかす。 子犬のような可愛らしいふにゃりとした口元。 完璧だ。 完璧すぎるマイエンジェル。 俺はこの1年間、人気絶頂の花宮暖くんに恋をしている。 ガチ恋だ。

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