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再会

「兄さん、どういうこと?昨日までは協力して花宮さんの治療を行うって話してたじゃないか」 開院時間より2時間ほど早く涼を呼び出し、会った瞬間に有無を言わさず俺が関わらなくても済む様な治療方針を涼に伝えた。 その後の俺は…診察室の自席に顔をくっつけ項垂れている。 明け方まで泣いていたため、もう涙は枯れたと思ったが、治療の説明を行ったらまた涙が溢れてきた。情けない。 泣きやみたくても涙が止まらない。 「ちょっと、大丈夫?こんなキャラだったっけ? 兄さんって落ち込むことあるの?なんで落ち込んでるわけ?」 「…された」 「ん?なにされた?」 「…プロポーズされた」 「は?」 「…プロポーズされた」 「は?誰に?一般皮膚科の看護師?患者さん?」 「暖くん…」 「ん?誰?」 「花宮暖くん!!!!」 俺は突っ伏していた机から飛び上がると、顔をぐしゃぐしゃにしたまま涼に向かって世界で1番好きな男の名前を叫んだ。 昨日、俺は暖くんと都内某所のカジュアルフレンチレストランで治療についての説明を行う会食をしていた。 そこで…彼と和やかに談笑し始めた矢先、プロポーズされたのだ。 よく良く考えれば、プロポーズは冗談かと思ったが動揺してしまった俺はその場から立ち去った。 暖くんに謝罪しようとした所、暖くんから大量の求婚LINEが送られてきたのだった。 「なるほど…でもなんでまた急に?」 「ヴァガラナイイイイイ」 俺の姿を見て真っ青になっている涼からティッシュを受け取り盛大に鼻水を噛んだ。 はぁ…もう涼になんて思われたって構わないよ。 医者もやめようかな。俺なんて生きている意味ないし。 「で、兄さんは患者さんからのプロポーズが嫌で泣いてるわけ?怖かったの?今までだって兄さんを狙ってた人って腐るほどいたでしょ」 「うぅ…」 「芸能人だから、断って逆恨みされて病院の評判が落ちるのを気にしてる?」 言葉にならないので、精一杯首をふるふると振った。身長188cmの男が涙を流して首を振っている姿はさぞ滑稽だろう。涼の顔は益々引き攣っている。 「大丈夫、うちは強めの顧問弁護士もついてるし、あの事務所とうちは長い付き合いだよ。俺から話してみるよ」 「ダメーーーーー!!」 俺は咄嗟に声が出た。暖くんが悪い立場になるのは間違っている。ただ、俺が混乱しているだけなのだ。 「声出るじゃん…」 「…花宮さんは…なんで俺なんかにプロポーズしたのか…わからない…グズっ…けど…うぅ。でも多分、仕事で精神的に参って…るっ…グズっ…とかだと…っ…思うんだ…っ」 「兄さんは返事したの?」 「…してな…いっ…だから…っ…申し訳なく…てっ…」 だめだ…暖くんに会えただけで限界突破してたのにプロポーズされたがため、俺の脳は思考を停止させてしまった。 彼に、何故あんなことを言ったのか聞くことも出来ない。 「どんだけ真面目なの…凍兄さんは」 涙を流す俺を見て、ドン引いていた涼は同情するような目で俺の顔を覗き込み、ティッシュを数枚追加して渡してくれた。 「治療についてはわかったけど、花宮さんのプロポーズがどういう事なのかちゃんと確認しなよ?患者とトラブルになるのはお互いにマイナスだからね」 こくこく頷くと俺は、涼にありがとうありがとうと連呼しお礼を言った。 「はぁ…花宮暖くんね…20歳のβか。まあ…兄さんはαの独身だし完璧な物件だもんな」 「失礼します!!」 目の前に聞き覚えしかない声が響き、金色の髪の毛をフワフワと揺らしながら俺と涼の前に愛らしい少年がズカズカと近づいてきた。 「僕は、寒川先生に一目惚れしました。だから結婚したいんです!駄目でしょうか!?」 上目遣いの暖くんの瞳は色素が薄いのも相まってオリーブベージュに光り輝いていた。 「か、かわいい…」 俺は脊髄から直接言葉が出るようになってしまった。 「先生!嬉しい!!」 暖くんはジャンプして飛び跳ねると、俺の首に手を回しギュッと抱きついてきた。 や、やばい…暖くんの…ぬくもり…あったかい… いい匂い…今日は石鹸のような…ベビーパウダーのような…純粋なのにエロい香り… 「花宮さん、診療時間外ですよ。また、医師に過剰な接触はおやめ下さい。兄は困っています」 「あ、兄弟なんだ!じゃあ俺が涼先生のお兄さんになるんだね!」 暖くんは涼の首から下げたネームプレートをみて目をキラキラと輝かせてコロコロ笑っている。 あぁ…だめだ…いい匂い… はぁ…幸せ…世の中にこんな…香りがあったんだ…まずい…なんか…勃起しそ… 「ぎゃー!!先生!!先生!?!?」 俺は暖くんの首筋に無意識に鼻を近づけ思いっきり息を吸い込んだ瞬間、目の前が真っ暗になりゆっくりと身体が後ろに倒れて行くのを感じた。 最期の声は暖くんの叫び声か… 幸せだったな。

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