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幻覚
俺の心配はあっさりと打ち砕かれ、暖くんは明朝にはライブ公演の前泊で九州へ飛んで行った。
相手は売れっ子中の売れっ子アイドルであるから当たり前なんだけど。
豆腐ハンバーグを温めて食べた夜、それが暖くんがうちに引っ越してきた夜だった。
その後たわいのない話をして、彼は1時間後には客間に消えていった。冗談で一緒に寝るかと言われたが、俺は優しく紳士的に断った。
もっとグイグイと迫られるかと正直少しばかり期待していたがプロ意識が高く、睡眠は大切にしているようで、あっさり引いてくれた。
そういえば、暖くんは大きなスーツケース1つを持って現れただけで、今後荷物をどうするとか相談もされなかったなあ。
佐竹さんが言う通り、彼なりの最大限のワガママなのだろう。きっと気が済んだら出ていくんだ。
気になるのは、一時的なものとはいえ、一応恋愛関係になったのだ。セックスはするのだろうか。
暖くんはβの男性だが、セクシャリティはわからない。しかし、α男性と結婚したいというのは本心なのか?ゲイ?バイ?
というか、これだけ忙しいなら正直火傷の治療だって難しい。
いくら顔じゃないと言っても、大規模なレーザー治療は多少なりとも身体に負荷を与えるし、治療後に激しく動くライブやダンスレッスンは難しい。
暖くん、一体何が目的なんだろう。
「はぁ〜。若い子って難しい」
暖くんが出かけて2日目の夜、俺はテイクアウトしたお弁当を食べながらため息をついていた。
今は自炊も作り置きもなんだか食べる気がしない。
♩トットコ
スマートフォンには暖くんからのメッセージが光る。
【先生〜今羽田に着きました!これから事務所で衣装の寸法して、サイン本の対応してから帰るので深夜になります(><。)先に寝ててくださいね。
あ、浮気しないように♡】
なんだこのLINE!可愛すぎる!
てか働きすぎだろー!偉い!凄い!
ファンのために頑張ってて尊い!!
え!自撮りついてるじゃん!やば!え!まだ首元ボロボロヨレヨレのTシャツ着てる…
暖くん、なんでいつもボロボロの服なんだ。
可愛いから何でも似合うけどさ。
あれ?
え?
これ乳首透けてない?
…ちょいと拡大…
いやいやいやいや、いかんいかん。
いくら彼氏になったからって、一過性の可能性が高い。大人として健全な対応を貫かねばならん。
性的な関係は進捗に。
写真は一応保存するけど…
一応ね。なんかあったら困るからね。
さて、返事返事。
【了解です。遅くまでお疲れ様。お言葉に甘えて寝てるかもだけど、音とか気にしないでゆっくりしてね】
よしよし、気を遣わせないようにと。
あれ?どんな写真だったっけ?
うーん。忘れたな。
何か重要事項が記載されている可能性もあるし、もう1回見よう。
わあ、可愛い。よく見たら、ほかのメンバーとのオフショットじゃん。
暖くん、信用してくれているのは嬉しいけど、こんなプライベートショット送ったらダメだぞ。
君がLINEしている相手は、ただの花宮暖ヲタなのだ!
ヲタなら写真を隅々まで見るのは仕方ないね。
与えられた使命と運命に抗うことは出来ない。
あれ?胸元が少し透けてるなあ。
これは、もしかしたらゴミとか虫かも。そうだったら伝えなきゃいけないし…
仕方がない。少し拡大しよう。
「ちちちちちちちちちくび!!!!ちちちちちちちちちちちちちちちちちちくびが透けてる!!??」
す、透けてる。
つんてしてる。
これ、他のメンバーが見て大丈夫なのか?
スタッフとか、佐竹さんとか興奮しちゃわないの?
…このツンとしたお豆を舐めたい。
口に含んでジュウジュウ音を立てて吸い上げたい。
ピクピクしてぷっくりしたら、先端を舌先でつんつんしてご挨拶したい。
…はぁ、だめだ。ムラムラして頭爆発しそうだ。
しかし、この写真で抜くなんて最低だ。
シャワー浴びよう。冷たいシャワー。
治まらなかったら暖くん以外で抜こう。うん。
俺は、自身の欲望を冷ますため食事は後にして浴室に向かった。
「はぁ、参ったなあ。αは性欲が強いのは仕方ないことだけど」
暖くんに出逢ってから、推したい気持ちと性欲で感情ぐちゃぐちゃだ。
浴室には最新のドラム式洗濯機が備え付けられており、洗濯物が溜まっていた。
最近バタバタしてたし、洗濯物片付けなきゃなあ。あとでルンバも稼働させよう。
洗濯カゴに手を伸ばすと、見覚えのないボクサーパンツが混ざっているのに気がついた。
「こ、これはまさか」
ボクサーパンツは可愛らしいクマちゃんのキャラクターが敷き詰められている。
俺は、周りに人がいないことを一応確認して手に取った。
神様、ごめんなさい。
俺は愚か者です。
ボクサーパンツを顔に近づけた瞬間、また脳天を直接貫くような香りが広がった。
優しくて純粋で清純な香り。下着からは、白くてフワフワな雲のような煙が上がっている。
幻覚?線香を焚いているわけでもないのに。
何なんだ。この煙。
いや、そんな事はどうでもいい。
この香り、堪らない。堪らない。堪らない。
この香りの持ち主をめちゃくちゃに抱きたい。
生殖器に突っ込んで、とにかく種付けしてやらなくては。
「…はぁ、なんていい匂いなんだ」
気が付けば俺はその下着に鼻を擦り付け、体に染み込ませるように何度も何度も香りを吸い込んだ。
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