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化け物

肺いっぱいに香りを吸い込む。芳醇で柔らかで淫らな香りが、脳神経を直接刺激してくる。 この香りは…暖くんが使っていた柔軟剤の香りなのだろうか。だとしたら、良い匂いの度を越している。嗅ぐことを辞められない。 口を固く閉じようとしても、口からは唾液がとめどなく生成されて溢れ出る。 俺はあることに気がついた。この魅惑的な香りは、ボクサーパンツの先端の、穴が空いた部分だけやけに濃いのだ。 だめだ…こんなこと… だめだけど…我慢が効かない。 香りが集中している部分の香りを深く吸い込み、脳天に刺激を与え終わったら舌を布に這わせていく。 ジュルジュル…ジュルジュル…クチャ… とめどなく溢れ出す唾液と混ぜ合わせるように、布に染み込んでいるのであろう一点を、俺はひたすらに舐め続けた。 「美味しい…はぁ…美味しい…はぁ…美味しい…」 甘い、とにかく甘い…こんな変態じみた行為、辞めなくてはならないのに、舐めることを辞められない。 変だ…甘いものが特別好きなわけでもないのに。 でも、本当に美味しいんだ。 舐めすぎてしまったからか、下着からは香りが薄くなってしまった。もっと、この匂いを嗅ぎたい。 … 俺は下着を抱えたまま、浴室を出た。フルマラソンを完走した時くらい俺の鼓動は脈打ち、血管を通じて身体を震わせることを辞めようとしない。 早歩きで自宅の廊下を進み、リビングの右手にある部屋のドアノブに手をかける。 ここは、暖くんが寝泊まりしている客間だ。 ゆっくりとドアを開けると、下着についている成分を薄めた香りが部屋中に充満している。 「はぁ…はぁ…ここは…天国か…?」 部屋のど真ん中にはダブルベッドがポツンと置かれており、シンプルで殺風景な部屋だ。 しかし余計なものがない部屋は、より香りを隅々まで行き渡らせた。 畳まれていないぐちゃぐちゃの掛け布団の傍には、同じくぐちゃぐちゃに脱ぎ捨てられたスウェットやTシャツが、小さな山になっていた。 俺は足早にベッドへ近づき、スリッパを脱ぎ捨てた。そして、迷いもなくベッドに作られた山を抱きしめた。 「はは…すごい…こんな良い香りがあるのか? パンツとは…また違う…柔らかい香りだ…はぁ…はぁ…暖くん…暖くん…」 だめだ……我慢なんてしただけ無駄だ。 この香りを吸い込みながら果てたい。出したい。気持ちよくなりたい。 俺はうつ伏せになり、腰を上げたまま香りの山に顔を突っ込みながら、もたつく手に苛立ちつつ自身を取り出した。 「かは…っ…ふぅ……んん…暖くん…暖くん…っ」 取り出した自身を右手で握りしめると、火傷しそうなほど熱を帯びていた。握る手に力を込めるとドクンドクンと脈を打ち、先端からは漏らしたのかと思うほど先走りが流れている。 「はぁ…暖くん…かわいい…かわいい…暖くん…好きだ…かわいいよぅ…」 俺は右手で雑に、自身をとにかく上下に動かした。香りが付着した布を吸い込むたびに、暖くんの無邪気で太陽みたいな笑顔が浮かぶ。 あぁ、そうだ。先月発売したライブDVD特典の楽屋裏オフショット映像。お弁当を頬張る暖くん、かわいかったなぁ…っ。パクパクと沢山口に入れて…っ…モグモグしているまあるい頬っぺた… 「あぁ…暖くん…暖くん…美味しい…ねっ…あぁっ…」 俺はそのまま左手をシャツの中に突っ込み、ガチガチに硬くなった左乳首を人差し指で力強く潰した。 「あぁっ…暖くん…っごめ…なさ…っ」 乳首を潰した瞬間、脳裏の暖くんは切り替わった。俺に馬乗りになって、ケラケラと高い声を上げて笑い、馬鹿にしている。 だめだ…そろそろ…っ。 右手にさらに力を加え、迫り来る欲望を快楽で放出しようとした瞬間。 ガチャ……ーーーーー。 「先生…?」 ドアがゆっくりと開くと、高く上げた尻の後ろから、動揺しきったか細い声が聞こえた。 「た、ただいま…先生」 柔らかで怯えた声の主である少年は、部屋に足を踏み入れた瞬間、ドサッと何かを落とした。 今、世界で一番美しく愛しい存在の瞳に、きっと俺は、自分の寝巻きと下着を舐めしゃぶりながら腰を振る、正真正銘の「化け物」として映っている。

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