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第6話
一月二日。
颯希は予定通り約束の十分前に到着し、伊織にメールする。
二分後、伊織から返信がきた。
メールには「ごめん。寝坊した。十五分くらい遅れる。」と書いてあった。
「わかった。近くの"丸野珈琲店"で待ってるから、焦らず、ゆっくり来て。」と返信し、あらかじめ検索していた近くのカフェ、"丸野珈琲店"を探しに出た。
カランカランとドアベルが鳴り、珈琲のいい匂いが漂う。
店内はアンティーク調の家具が多く、落ち着いた雰囲気。
テラス席もあり、明るく広々としている。
後で伊織も来ることを考え、一人用ソファが二つ、丸テーブルを挟んで置かれている場所に向かう。ゆっくりとソファに腰掛け、メニューを確認。
しばらくすると小柄な男性店員がふわりとした笑顔で注文をとりにきた。
「ご注文は、お決まりでしょうか?」
「ミルクティーをください。」
店員は「かしこまりました。」とカウンターの方へと向かった。
「お待たせいたしました。ミルクティーです。」
ショートヘアの女性店員が先ほど注文したミルクティーをカップへと注いでくれる。
スマホのディスプレイを眺めながらミルクティーを一口飲む。
「少し甘めで美味しい。」と自身の入れた角砂糖の量に満足した。
十数分後。
カフェの扉が開き、伊織が目の前の席へと腰掛ける。
「遅れて、ごめん。」
「大丈夫。それより、穂積も何か飲む?」
伊織は静かにこくりと頷くとメニューを確認。
しばらくして、先ほどの男性店員に声をかけた。
「カフェオレ、ください。」
店員は先ほどと同じようにカウンターの方へと向かっていった。
伊織は颯希の前に置かれているカップをみて、まだ少し残っている中身について尋ねた。
「それ、何?」
「ミルクティー。」
「甘そう…。」
「うん。甘い。でも、美味しいよ。」
颯希がそう言いながら優しげに笑うと、先ほどまで無表情で会話をしていた伊織は突然、面白そうに控えめな笑顔を見せた。
なぜ伊織が突然笑い出したのか、理由がわからず、颯希は不思議そうな顔をする。
「ふふっ。食堂で三人でご飯食べてた時も思ってたけど、颯希って精神年齢高いのに味覚は幼いよね。そのギャップがなんか、すごく面白くて、つい笑っちゃう。」
「そうかな?あんまり意識したことはないけれど、幼いかな?」
伊織は相変わらず笑いながら「うん。幼い。」と返した。
そんな伊織を見て、なんとなく恥ずかしく感じた颯希は「そんなに笑うなよ。」と少しムッとする。
「大丈夫大丈夫。そういうのが颯希の可愛いところだから。俺、結構そういうところ好きだよ。」
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