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第9話
二月二十五日。
今日からようやく十四歳。
けれど、今日も学校だ。
いつも通りに起き、いつもの電車に乗って学校へ向かう。
(よくよく考えてみれば、朝比奈の誕生日は八月十八日。穂積の誕生日は四月二十六日。
一番年下なのは俺で一番年上なのは穂積だけど、どう考えても穂積が末っ子で、俺が次男、朝比奈が長男、だと思う。
性格的に。
あとは、生活能力?)
自分の考えていることのあまりのくだらなさから、マフラーで隠れた颯希の口元は笑っていた。
スマホの画面を眺め、何気なくネットを開く。
画面をスライドしていくと、占いサイトに目がいった。
無料占いサイトを開き、占う内容を選ぶ。
それは相性占い。
二月二十五日生まれ、B型、S君と四月二十六日生まれ、AB型、I君との相性占い。
情報を入力し、診断ボタンを押そうとした指を止めた。
(もし、低い点数出たらどうしよう。
男同士で親友同士。
結ばれる可能性なんて、ないのかもしれない。
これで更に相性占いまで悪かったら、きっとショックを受けるかな。)
またも、自らの情けなさにため息が出る。
開いたネットを閉じ、スマホの電源を切る。
「おはよっ!誕生日おめー」
教室のドアを開けるなり、真っ先にお祝いのコメントが悠馬から発せられる。
その声で横に眠っていたのだろう伊織が目を覚ました。
「おはよ…。誕生日、おめでと。これ、あげる。」
今にも閉じそうな瞼を擦りながら伊織は紙袋を手渡す。
「なにこれ?開けてもいい?」
伊織がこくりと首を縦に振ったことを確認し、紙袋の中身を確認する。
中には紺色のステンレスタンブラーが入っていた。
実用的な物を渡してくるところがやはり伊織らしいと思う。
「ありがとう。大切にするよ。」
タンブラーを持ち上げると封筒が入っていることに気づく。
中を確認すると、それは悠馬からだった。
「昼休み、屋上にこいよ。プレゼントあげるからさ。」と書かれている。
手紙で渡すと言うことは、他の生徒はもちろんのこと、伊織にも内緒という意味だろうと察した颯希はちらりと伊織を見る。
紙袋を渡した伊織はすぐさま寝に入っていた。
どうやら手紙には気づいていないらしい。
四限目の授業を終え、昼食をとった後、先ほど指定された屋上へと向かう。
二階の教室から屋上まで五階分も階段を上がる。
屋上の扉の前につき、乱れた呼吸を整え、ガチャリと重い扉を開いた。
「よお。お疲れさん。」
悠馬は先についていた。
緑茶の入ったペットボトルを左手に持ちながら颯希に声をかける。
「ありがと。それで、穂積や他の人達に秘密のプレゼントって、何?」
悠馬の隣に腰掛けながら尋ねる。
「さっすが颯希!他の奴らに内緒って察してくれて助かったぜ。」
明るく笑う悠馬に「そりゃあ、わかるよ。」と返す。
「でもさ、これが伊織だったら、あの手紙みた途端、「これ、何?」っていうと思うぜ?」
確かに。伊織なら確実にそう反応すると共感した颯希は「それもそうだね。」と笑った。
「んっ!これ、やるよ。」
悠馬は何かのチケットを二枚、颯希に手渡した。
「水族館のチケット?しかも、なんで二枚?」
手渡されたチケットを見ると、それは都内の水族館の入場チケットだった。
疑問を浮かべる颯希に悠馬がにやりと笑う。
「伊織、誘って行けよ。親からもらったとかなんとか言ってさ。」
その発言を聞くと颯希はみるみるうちに顔を赤くする。
それを見た悠馬が「本当、お前ってわかりやすいな。」と颯希の頭を撫でた。
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