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4話 チートなしな食事情
朝の鐘と共に、フタミはあくびをしながらのそりと起き上がった。
「ふぁー……王立なのに寮のベッドがうちより堅いってどうなってんの……」
薄いマットレスのせいで、非常に背中が痛い。生活水準に満足できないフタミにとって、由々しき問題である。
寮の部屋は、四人部屋だ。幸いなことに偶然にも、『転生モブ同盟』の四人が同じ部屋となった。
部屋の四つ角にベッドと机が置かれており、奥の壁には共有のクローゼットと本棚がある。部屋の中央には丸テーブルが置かれており、ちょっとしたお茶も出来る。なかなか悪くない部屋である。
なお、風呂は大浴場、トイレは別だ。高位貴族の寮ではそれぞれの部屋にシャワーがあるらしい。このシャワーというシステムは、魔法によるインフラである。ご都合ゲーム設定の一つだ。こういう部分は、文化的なゲームでよかったと、フタミは思う。
「おはよう、フタミ」
「んー。おはよーミツハ。イチルとヨツギはまだ起きねえの?」
「多分、ヨツギは起きてる。布団から出てこないだけ。イチルはな……」
「イチルはなぁー」
普段はしっかり者の長兄であるイチルだが、寝起きだけは悪い。社畜時代に培ったのか、眠れるときはとにかく寝るというスタイルで、一度寝るとなかなか起きてこない。
「ほらヨツギ、起きろ。イチル起こそう」
フタミはヨツギの布団をポンポンと叩き、奥のイチルのベッドに向かう。
「ぼ、僕は今日は学校行かない」
「初日だろ。頑張れ。イチルー。朝だぞー」
布団をひっぺがしながら、イチルに声をかける。イチルは眉間にしわを寄せて、嫌そうに身体を丸めてしまう。
「イチルー。おい、イチ。起きな」
イチルを起こそうと頬をペチペチと叩いたり、腕を引っ張ったりするが、起きそうにない。
「おいこの眠り姫。いい加減、起きろよ」
「フタミ、代わる」
後ろからミツハがやってきて、そのままイチルをヒョイと抱えあげた。
「うおおっ!?」
肩に担ぎ上げられ、さすがにイチルも目を覚ます。
「お。起きた。ナイス」
「わあっ。ミツハ、怖い! 下ろして」
「ん」
背の高いミツハに抱えられ、驚いて落ちそうになりながら、ミツハにしがみついている。ヨツギはそんな様子を横目に、マイペースに制服に着替え始めていた。
「初日から遅刻、シャレになんないだろ?」
「あー……、うん。ありがとう皆。おはよう」
「おはよ。早いところ着替えて、食堂に行こうぜ」
「ん」
◆ ◆ ◆
ざわつく食堂の気配を背に、フタミはため息を吐き出した。その様子に、イチルの「顔に出すな」という圧を感じるが、彼のスプーンを動かす手は鈍い。文句を言わずに口に運んでいるミツハの横では、ヨツギが既に食べることを放棄している。
(ポリッジか~。まあ、そうだよなあ……)
ドロリとしたポリッジをスプーンでかき混ぜながら、うんざりする。
この朝食は、ラローズ王国の一般的な朝食である。薄めたワイン、パンまたは粥、良いときはチーズかハムが付く。開発者が手抜きしたのか、食に興味がなかったのか。あるいは見てくれの良いケーキと焼き菓子以外は女の子らしくないと排除したのか、この世界ではまともな料理描写がそもそも存在していない。したがって、料理のレベルは中世程度である。
その為なのか、大抵の朝食では火を使っての調理をしない。せいぜいが粥を作るか、前日のスープを温める程度である。
朝からしっかり食事をとるのは労働階級だけで、貴族などは果物と薄めたワインしか食さないこともある。日本人には厳しい食事情だ。
「よく食えるよな、ミツハ……ほぼゲ――」
「お前その先、絶対に言うなよ」
イチルに釘を刺され、きゅっと口を結ぶ。
とはいえ、イチルも日本人なので、この食事レベルは満足できていない。実家にいた頃には食事情を改善していたメンバーたちだ。
「いずれにしろ、何とかしないとヨツギが断食する」
「あー、そうね。うん」
基本的にイチルは『末っ子』に甘いので、一口も食べないヨツギの様子に、何とかしないといけないと考えたようだ。
「取り敢えず、あとでパンとハム、くすねて来るわ」
「お前はそういうの、頼もしいよな……。野菜も探してくれ」
イチルはもう少し釘を刺したかったようだが、それ以上は言わず、顔をしかめながら粥を啜った。
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