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7話 選択授業を選ぼう

 聖ステラ学園の授業は、必修の基本カリキュラムの他、選択式の授業が幾つかある。必須の授業としては、国語、数学と基礎魔法学、歴史、自然学。選択授業として応用魔法学、外国語、音楽、基礎錬金学がある。二年生になると建築学、経済学、工芸、農業、応用錬金学が選択カリキュラムに追加されるらしい。一年生のうちは応用魔法学、外国語、音楽、基礎錬金学から二科目を選択することになる。 (音楽とかまるで興味ないし。魔法~?)  自慢じゃないが、フタミはバリバリの理系なので、この世界に生まれ落ちてからも魔法という概念がちっとも理解出来ないでいる。一応、魔力的なものはあるし、身体の中に存在を感じてもいる。この世界に生まれ落ちたものとして、基礎魔法は一通りできるのだが、どうしてもコップを逆さにしても水が落ちないという謎の物理法則や、水の中で炎を燃やすことが可能なことに理解が及ばない。その為、簡単な火種を灯すことや、喉を潤す程度の水を出すことはあっても、日常の便利なものとして魔法を使うことは殆どなかった。  フタミにとって、魔法そのものよりも、魔力を電気信号のように扱う魔道具の方が、理解しやすいのである。  選択カリキュラムの申し込み用紙を片手に、唸りながら頭を掻く。  恐らくイチルは応用魔法学と外国語を、ミツハは外国語と音楽を、ヨツギは応用魔法学と音楽を選択するだろう。もしかしたらヨツギは「僕はやらない」というかも知れないが、そうはいかないので何かは選ぶはずだ。 (魔法はナシだな。意味分からんし。音楽ぅ~? 無理だろ。楽器なんか前世から触ったことないぞ)  消去法にはなるが、これしかないだろうと、外国語と基礎錬金学を選択する。外国語は将来、商会を大きくするときに役に立つかもしれないし、海外の情報を取り入れるのはアリだ。基礎錬金学のほうは、フタミの認識では『ちょっと不思議な化学』である。基礎錬金学では初級ポーションや染料の作成、魔石の加工などを教える。染料の作成については商会でも既に行っているので、フタミには相性の良い授業になるはずだ。  申し込み用紙に丸をつけて満足げに頷いていると、後ろの席に座るミツハがちょんちょんと背中を突いてきた。 「もう決めたか?」 「おー。ミツハは? あ、やっぱり外国語と音楽」 「ああ。魔法も錬金術も良くわからねえ」 「だよな。基礎魔法学だけでも嫌なのにさあ」 「まあでも、学校ってのは悪くねえ」 「そう?」  ミツハは深く頷く。前世でミツハは中学も高校も真面目に通っていなかったらしいので、フタミとは見えるものが違うのかも知れない。 「イチルたちはどうしたかね」 「まあ、予想通りじゃないのか」 「だよな。外国語で会うかな」  イチルとヨツギは、残念ながら同じクラスにはならなかった。平民と貴族が同じ学び舎で学ぶということになっているが、実際にはやんわりと線引きがある。フタミたちのクラスは平民のクラス。イチルたちのクラスは下級貴族や上位貴族の次男などと分かれている。この他、上位貴族のクラスが存在している。上位貴族のクラスは少数精鋭といった感じで、攻略対象のキャラクターはすべてこのクラスだ。  必須カリキュラムはこの線引きされたクラスで受けることになるが、選択カリキュラムでは上位貴族とも一緒になる可能性がある。そういう意味では、平等なのは間違いないのだろう。  ちなみに原作では、手違いでヒロインであるオリシアが、平民にも関わらず上位貴族のクラスに配置されたということになっている。なんとも、ご都合主義なシナリオである。 (オリシアちゃんは上位貴族のクラスになったのかね。特に噂は聞こえてこないけど……)  ゲームで可愛く描かれていたヒロインに興味はあったが、イチルから「ゲームの関係者に関わるな」と厳命されているため、フタミたちはヒロインの姿を見たことがない。ちょっとだけ残念な気分だ。 (オリシアちゃんって、選択カリキュラム何にしたんだっけ? 攻略対象ごとに違うのか?)  ゲームをプレイしたとはいえ、ガチで取り組んでいたわけでもないため、フタミの記憶に細かい話は殆ど残っていない。何となく、バイオリンを弾くイベントスチルがあったような気がするくらいだ。 「ま、どうせなら何か、役に立つもん学びたいよな。折角学校に入ったんだしさ」 「そうだな」  やる気満々でそう意気込んだフタミは、数秒後、カリキュラムの申請を行った後で、女子の多くが応用魔法学と音楽を選択したと知って後悔するのだった。

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