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13話 そろそろ結構関わっていると自覚はしている

「週末は一度、商会に顔を出そうと思う。お前たちはどうする?」  パンにバターをたっぷり塗りながら、イチルがそう言い出した。学園生活にも慣れ、そろそろ店の状況も気になってきたところだった。 「おれは孤児院に顔を出す。チビたちが気になる」 「ぼ、僕は本屋さん」  どうやらミツハは、実家でもある孤児院に行くらしい。ヨツギは本屋に行くと言っているが、孤児院のすぐ近くなので、恐らくはそちらに合流するのだろう。 「じゃあオレは商会に顔だしたら、孤児院に合流しようかな。何か持っていくよ」 「助かる」  孤児院の運営は本来は貴族の仕事らしいが、ミツハの孤児院は少し放置され気味だ。貴族のボランティアは随分来ていないし、寄付も滞っている。そんな理由から、フタミたちは以前から、孤児院の運営を支援していた。ミツハの家である孤児院を支援しない理由はないし、仲良くなった孤児たちは商会を手伝ってくれている。半数以上はそのまま商会に就職し、その他の子供たちも自分のやりたいことを見つけている。  今のところ、良い関係だと言えるだろう。 (オレのほうは、あとはガウンを返却しなきゃだけど……)  フタミはパンを齧りながら、うーんと唸った。  上等な、ちょっと古ぼけたガウンを、そのまま返して良いものか、迷う。洗って返すのが筋な気がしたが、勝手に洗っても良いものだろうか。この世界の洗濯事情に、フタミは正直、疎い。実家では使用人任せで、今はイチルにお任せである。 (あ。そうだ)  ピタリとパンを食べるのをやめ、思い付いたフタミに、ミツハが視線をやる。だが、ミツハは問いかけては来なかった。 (あの子が居るじゃん。ロビンだっけ?)  ディオルフの家の、元使用人。彼ならば、きっと自分の悩みが解決できるに違いない。そう考えたら、スッと胸のつかえが取れたようで、フタミは気分良く朝食を終えたのだった。    ◆   ◆   ◆  ロビンは、デルフィニウム公爵家につかえていた使用人の子供らしい。現在は倉庫管理として学園で働いている。既に何度か、食料調達のために会ったことがあるし、話もしやすい。  フタミは早速、袋の中にディオルフから借りてしまったガウンをしまうと、ロビンの元を訪ねた。  ロビンは倉庫の前に箱を並べ、その上に過剰な食材を配置する作業をしている。平民生徒たちには良いマーケットであるこの倉庫市場は、朝早くが人気で、売り切れてしまうことも多い。 「ロビンー」  フタミが声をかけると、ロビンはチラリと視線を寄越して、作業の手を止めた。 「えっと、フタミさん。おはようございます。今日もパンと卵ですか?」 「うん。それとなんか適当に野菜。今日はハムとかある?」 「今日は残念ながら肉類はないです。でもチーズがありますよ」 「え、良いじゃんチーズ。貰うわ。ミツハが好きなんだよなー」  ミツハは普段は寡黙で、自分の好き嫌いを表に出さない。マチズモが強いところがあり、『男とはこうあるべき』みたいな考えが根強いようだ。だがフタミたちは彼がチーズを前にすると表情が柔らかくなるのを知っている。大きな塊のチーズに、胸をときめかせるに違いない。 「あ、それとなんだけどさ」  と、フタミは周囲に他の人間が居ないことを確認し、袋からガウンを取り出した。  ロビンは一瞬、何を始めたのか怪訝な顔をしたが、すぐにそれが何なのかに気づいたらしく、目を見開く。 「そっ、それは、ディオルフ様の……」 「あ。解るんだ。さすが。実は昨夜、ちょっと借りてさ……」 「か、借りた?」  ロビンが驚いたように目を見開く。その頬が、なぜか赤く染まる。 「うん。それで、返しそびれてたもんで。そのまま返すのは忍びないし、洗っても大丈夫かなって」 「―――それは、はい。その……アユハラの実を使った石鹸であれば」  動揺したように視線をさ迷わせながら、ロビンはしどろもどろにそう言った。だが、フタミはその様子のおかしさに気づかないで、喋り続ける。 「お。そういうの欲しかったんだよ。アユハラの実ね。ありがとう」  情報を得てホッとしたフタミに、ロビンは赤い顔でじっとフタミを見る。 「えっと、その……。夕べは、お二人で、過ごされたんですか?」 「ん? うん。内緒な。抜け出したのバレたらオレもディオルフもマズイだろうから」 「もっ、もちろんっ。口外などしませんっ! ……その……。ディオルフ様は、口数は少ないですが、お優しい方なんです」 「おん? だなー。アイツ結構、優しいよな」  ロビンは相当、ディオルフに心酔しているらしい。フタミの方も、ディオルフの優しさは解っている。迷子を助けてくれたり、ガウンを貸してくれたり、態度は不遜だが、優しさを感じることが多かった。 「……若いのに苦労されて。それなのに僕たち使用人にも気を遣って下さって……。あの、フタミ様、―――ディオルフ様のこと、よろしくお願いします」 「え? ああ、うん」 (よろしくと言われてもなぁ……)  攻略対象には関わるな。そう言われているだけに、頷きづらい。  フタミは曖昧に濁して、その場を後にした。

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