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18話 一夜明けて……恥ずかしいって。
勢いのままに自分の部屋に駆け込み、布団の中に潜り込んだフタミだったが、結局、一睡も出来なかった。ふとした瞬間にディオルフのことを思い出して、その度に赤面して暴れたくなってしまう。
夜明けの頃にヨツギがベッドに潜り込んで来なければ、少しも休まらなかったかもしれない。
明け方、心配したのかやって来たヨツギを抱っこして目を閉じていると、ようやく冷静になれた。
「なんだヨツギ、フタミと寝たのか」
「ん」
いつも通りにきっちり起きてきたミツハに見つかり、ばつがわるい顔をしながらのそりと起き上がる。ヨツギは無言で頷いて、ピョンとベッドから飛び降りた。
「眠れないでいたら、ヨツが入ってきた」
「そうか。大丈夫か?」
「まあ、平気。多分」
正直なところ、大丈夫かと聞かれたらダメなのだが、仲間にこんな理由でおかしくなっていることを説明出来るはずがないので、大丈夫だと言い張っておく。
(マジで、どんな顔すりゃ良いんだって)
画面の中の登場人物だったはずの相手が、生身の男だったと、思い知ってしまった。あまりにも生々しい熱量と、その感情に気づいてしまったら、どうしていいか分からない。
ミツハはまだ布団にしがみつくイチルを起こしにかかっている。それをベッドの上で見守りながら、溜め息を吐いた。
「フ、フタミ、学校、行かない」
「いや、行くよ。行く。ちょっとボーッとしてただけ」
ヨツギの言葉に、慌てて否定する。本心では少し行きたくない気持ちもあったが、先延ばししても仕方がない。それに、可愛い弟分まで、一緒にサボりかねない。
(まあ、教室も離れてるし、選択授業で逢うくらいだろ……)
幸い、今日の授業に選択授業はない。しばらく待てば落ち着くはずだ。そう思って、フタミは制服に手を伸ばした。
◆ ◆ ◆
フタミのいるCクラス――いわゆる平民クラスは、ディオルフたち高位貴族のいるクラスと、だいぶ離れた場所にある。内装や調度品も高位貴族のクラスのほうが豪華で立派であり、当然、わざわざ行き来しない限り、すれ違うことすら稀だ。そういう理由で、今日はディオルフと会うことはないだろうと思っていたのだが――。
「フタミ・クローバーはいるか?」
教室の扉をくぐり、現れたディオルフ・デルフィニウムの姿に、教室中が騒然となる。
急に騒がしくなった教室の空気に、遅れて気がついたフタミは、ディオルフの姿を見つけて驚いて飛び上がった。
「っ、ディオルフっ……!?」
注目が一気にフタミの方に向く。フタミは悪目立ちしていることに気づくと、慌ててディオルフの元へと駆けていく。そのまま、押し出すようにしてディオルフを廊下の端の方へと連れ出した。
「な、なんだよっ」
今日は顔を見ないで済むと思っていたのに、原因の方からやって来たことに動揺する。なんとなく、顔が熱い。
「顔を見に来ただけだ。昨夜、あんな格好で帰ってしまうから」
「っ、なんだよ、それ……」
ドキドキと、心臓が鳴る。ディオルフの視線が、じっとフタミを見つめている。まるで、傷一つも見逃すまいとする視線に、どうしようもなくソワソワした。
「無事なら良い。……送るべきだった」
「良いって、そういうの」
「そういうわけにはいかん」
どういう意図で、ディオルフがそう言ったのか分からない。ただ、フタミの心をざわつかせる。
「なんでだよ」
「なんでもだ」
ディオルフは本気で言っているらしく、なんだか落ち着かない。ディオルフの視線や態度が、妙に甘く熱を孕んでいるように感じるのは、思い上がりだろうか。
「とにかく、無事なら良い。――お前は、自分で思っているよりも、美しいからな」
「―――、~~ば、バカじゃね!? お前だろ!」
ミツハならともかく、自分がそんなことを言われると思わず、顔が赤くなる。
「そういうところだ。じゃあ、またな」
「あっ……」
フワリ。優しい笑みを返して、ディオルフが去っていく。その背中を、フタミはなんとも言えない気持ちで見送るのだった。
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