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2章 転生したヤンキーは、闇落ち騎士を救いたい プロローグ

 青い空に、無数の花びらが舞い上がった。新入生を歓迎するために撒かれた無数の花は、これからの門出を祝福しているようで。 「感慨深いなあ。ついに、俺たちもステラ学園の学生と言うわけだ」  馬車の窓から外を眺めて、レヴァン・ラローズ・グローリーがそう頷く。金色の長い髪を項で纏めた、ルビーの瞳の青年。彼こそが、この国の第一王子である。 「確か、新入生の代表挨拶するんだろう? 本当は首席が挨拶するのに」  と、レヴァンの隣に座っているのは、ディオルフ・デルフィニウムである。青い艶やかな髪に金色の瞳の、公爵令息であり、レヴァンとは従兄弟でもある。呆れたような溜め息を吐き出し、詰まらなさそうに目蓋を伏せる。 「ああ、聞いたぞ。なんでも、アオギリ男爵令息が史上初の満点合格だったそうじゃないか。それをお前……」  眉を寄せてそう言ったのは、エメラルドの瞳を持ち、赤毛を短く刈り上げた青年、フロスト・モルセラだ。レヴァン、ディオルフの二人とは、幼い頃からの付き合いである。伯爵家の出身で、騎士の家系。いずれ、レヴァンの側近として働くことを嘱望されている青年だ。  いずれも乙女ゲーム『星降る夜のファンタジア』の攻略対象である。もっとも、本人たちは預かり知らぬことなのだが――。 「仕方ないだろう。王族を差し置いて、男爵家の人間が挨拶するわけにはいかないということなんだから。全く、今年は優秀な人間が多くて、嬉しいやら悲しいやらだよ」 「ああ……。オレもお小言食らったよ……。男爵家に、子爵家、平民と、優秀な人材が多かったみたいだねえ……。レヴァンとディオルフは2、3位だったみたいだけどさあ。オレ、7位だぜ……?」  フロストがげんなりした様子で溜め息を吐くのに、レヴァンはディオルフと視線を合わせて肩を竦めた。モルセラ家の当主である彼の父は、非常に厳格だ。相当、こってり絞られたことは想像がつく。 「『日の本商会異世界出張所』が異常なんだよ。1位のイチル・アオギリを筆頭に、4位がヨツギ・リンドウ、5位がフタミ・クローバー、6位がミツハってやつだな。全員、『日の本商会異世界出張所』の商会員だ」 「バケモノかよぉ……」 『日の本商会異世界出張所』というのは、最近評判の商会である。様々な発明品、工芸品のような缶入りクッキー、商会運営技術。どれをとっても、抜きん出ている。 「しかも、ミツハってのは孤児なんだろ? 本当におかしなやつらだよ」 「孤児に負けてるんだよ、オレは……」 「この学園の大抵の人間が負けている。気に病む必要はない。お前がダメなのではなく、彼らが優秀なんだ」 「まあ、そうだけど……」  ディオルフの言葉は解るが、自分は優秀な家庭教師がいるのだ。相手が優秀なのは間違いないが、心情としては飲み込みにくい。  ふと、窓の外を見る。校門の前に、珍しい黒髪の四人が目に入った。 (綺麗だな……)  艶やかな、美しい黒い髪。触れてはいけない宝石のようにも見える。  フロストはその一団を、じっと見つめる。  花びらを鬱陶しそうに払う、無造作に髪を束ねた青年と、目があった。  パパラチアサファイアの、美しい瞳。 「―――」  思わず、目を逸らす。 (な、なんだ……?)  ドクドクと、鼓動が鳴る。  フロストは舞い落ちる花びらの中、新たな生活の始まりとともに、どこか予感めいたものを感じていた。

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