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「七瀬、まだ寝ないのか」
リビングにやってきた柊一さん。いつでも寝れるようなラフな格好している。
「そろそろ寝るよ。歯を磨かないとね」
俺も映画を見る前にラフな恰好に着替えた。いつでも寝られる。
「七瀬一緒に行くか、俺もやらなきゃと思ってたとこ」
「うん」
「じゃ、音止めるぞ」
彼はアレクサに音楽を止めるメッセージを伝える。
俺と柊一さんは共に洗面所に向かう。
「七瀬専用のヤツ作ったからな」
着いてすぐに彼から歯ブラシセットを貰う。
「えー!ありがとう嬉しい~」
「俺のとこに一週間に一回は泊まりに来るからな、お前」
俺は特別待遇されたみたいで、顔がにやける。他にも同じような女性 居るのかもしれないけど、気にしない、気にしない。いい方に考えよう、レッツポジティブシンキングだ。
「なんか通い同棲みたいでいい~」
「まあ好きなように考えろ、俺はどうでもいい」
柊一さんは自分の歯ブラシを出して歯磨き粉をつけて歯磨きし始める。俺はにやけ顔を隠さないまま歯磨きに突入。
「幸せそうだな、七瀬」
「だって柊一さんが俺の為に歯ブラシセットくれたから」
柊一さんは呆れ顔を作る。俺は気にせず満面の笑みで歯磨きをする。通い同棲万歳だ。
「コップは柊一さんと同じの使っていいの?」
「ああ」
俺はまた上機嫌になる。本当に恋人同士みたいだ。歯ブラシ使い終わったら、一つのコップにお互いの歯ブラシを入れられたら完璧。
「歯ブラシは歯ブラシホルダーがあるから、そこにかけとけよ」
残念。完璧までは行かなかった。柊一さんの家は多くの女性が行ったり来たりしているからしょうがないのかもしれない。歯ブラシホルダーの一角は俺のスペースになった。それだけでも良しとしないとな。
「じゃ、俺は先に寝室に行ってる」
柊一さんが洗面所を去ろうとしたので、俺は急いで彼の手を掴む。
「俺も一緒に行く!」
「寝室行くだけだろ…」
「俺は一緒がいいの!」
強引に俺が押し切り、彼はやむなく一緒に寝室に向かうことになった。
「何もせずにお前とここに来るのも久々だな」
「……や、や、やめてよ」
俺はまた顔を赤らめる。キングサイズのダブルベッドがおいでおいでしている。ダメ、ダメ。今日はもう寝ないと。明日は平日で仕事だ。
「――ま、俺はどっちでもいいんだけど」
柊一さんが先にベッドにダイブする。
「こいよ、七瀬」
俺はかぶりを振る。ここで彼の中に落ちたら最後だ。俺はそっとベッドに滑り込む。
「いいのか?七瀬。俺は構わないけど」
「俺が構うの!柊一さんの方行ったらまたそういうことになっちゃいそうで」
俺は柊一さんに背を向けながら話す。
「どうにかなっちゃいそう?例えばどんな――?」
柊一さんは俺の背中に密着して、腕を俺の腰にまわす。彼の声が一段と低くなる。獲物を狙っている声だ。
「ダメ…ダメ…!明日仕事だから――」
「下半身の方はそうは言ってないみたいだぞ」
彼の手が腰から股の方に移動する。俺は身体を震わせる。彼は耳元で囁く。
「さっき、お前『好きにして』って言ってたよな」
「――!い、い、言ったけど…」
それは、もう先刻の行為で終わったんじゃないのか。俺は身体を硬くする。心臓が跳ねる。
「それは俺が気が済むまでいいって事だよな?」
「そ、そう、そうなのかな…えっと、わ、わかんないな」
「わからないなら、身体に聞いてみるだけだな」
俺は目を瞑って身体を丸める。彼に抱かれるのは嫌じゃないけど、明日の事を考えると社会人としての俺が否定する。
「――え?」
彼の腕が一気に俺の身体から取り払われる。俺は驚いて、彼の方を向く。
「――しねえよ。発情期の獣にはならねえよ」
「脅かさないでよー」
俺は手足をばたつかせる。全く心臓に悪い。悪びれることなく、彼は破顔する。
「七瀬からかうと面白いから。でもお前マジでされると思ってたな」
「だって、柊一さん本気でくるんだもん…身構えるよ…」
柊一さんは俺の顔を摩りながら瞳を見つめる。
「七瀬、可愛い」
俺はまた赤面する。こんなシチュエーションでその台詞は卑怯だ。破壊力半端ない。
改めて彼の顔を見る。琥珀色の瞳、凛とした鼻、端正な口許、左目の下に小さな黒子《ほくろ》。浅黒い肌の上で綺麗に並んでいる。艶っぽい表情は先程のお遊びがそうさせているのか。眉目秀麗とはこういう顔をいうんだなあと。
俺はこんな人に抱かれてたのかと思うとまた気恥ずかしさで、心臓が跳ねる。
「ちゅーぐらいならいい…」
「何?」
「ちゅーぐらいならしてもいいよ、柊一さん」
「上から目線かよ、七瀬」
彼は俺を押し倒し、上に乗りかかる。
「えっえっ―――?!」
やらないんじゃなかったの、発情期の獣じゃなかったの?俺はただ大きな目を丸くして彼の動向を窺う。
「ちゅーしてくださいだろ、言い直せ、七瀬」
「え?!あ、あ、う、うん」
「言えよ」
柊一さんの声のトーンが低くなる。その圧倒的な色気に俺は圧される。
「ちゅ、ちゅーしてください」
刹那、彼の唇が俺の唇に重なる。深く甘く俺の口に広がっていく。舌が絡み合い、お互いの吐息が漏れる。鼓動を感じる。胸が高鳴る。
「だ、だめ…これ以上は――」
俺は彼を引き離そうとしたが、深いキスで酔わされて力が出ない。アンパンマンが顔の一部を食べられた状態だ、へなへなになる。
「相変わらず感じやすいな、お前。これ以上今日はしねえよ」
彼はそのまま横に倒れる。
「七瀬の蕩けた顔見られたから今日はここで仕舞だな」
はあはあと息を切らせ、上気した顔で彼を見る。彼は涼しい顔をしている。
ずるい。
こういう時でも彼は冷静沈着だ。欲に溺れそうになった俺がバカみたいだ。実際俺は脳筋のバカだけど…。
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