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心拍数9 なし崩し的に
「おやすみ、七瀬」
彼は布団を被り、眠りの森へ旅立とうとしている。俺は中途半端に欲を植え付けられ、身体が火照って仕方がない。自分で彼をセーブしたのに、これでは意味がない。俺は彼に近づき、その胸に顔を埋める。
「一人で寝ないで……淋しい――」
少し涙目になって俺は彼に懇願する。
「何だよ、七瀬。今日はもう終わりだと言ったはずだ」
これで終わりにするのが正解だ。それはわかっている。頭では理解しているが、身体がそれを拒否する。
「もうちょっと…ちょっとでいいから――」
「ちょっとじゃわからない」
「ちょっとだけ…つきあって…」
「はっきり言わないとわからない。言わないと俺は寝る」
あくまで彼は俺から言わせる気だ。彼の意地悪さが際立つ。
「…ええと…その…」
「はっきり言え。そうしないと俺は寝るからな」
俺は更に顔を赤くして小声でつぶやく。
「お、俺を抱いて――」
「聞こえない」
本当は聞こえているくせに、彼は平気で嘘をつく。
「俺を抱いて!」
「よくできました」
言うや否や、彼は俺を押し倒し、俺に覆いかぶさると、唇にキスを落とす。片手でTシャツの中をまさぐり、片方の手で股の間を刺激する。両方に刺激を与えられ、俺は腰を浮かせる。
「や…やさしくして…明日会社…ある…から…」
「俺はいつでも優しいだろ」
「う、…う…そ…」
彼は唇を離れると、その舌を耳朶にあてる。片方の手は胸の小さな突起物にぶつかり、そこを執拗に弄る。
「ああ…うあ…ああ、ん、んん…」
「ここ好きだよな、お前弄られると、いい声で鳴く」
俺はまともな言葉を発せずに、彼のバリトン声だけが寝室に響く。
「やらしい顔。お前自覚できてるか?明日会社で見せられない顔だな」
彼は首筋に沿って舌を這わせる。唇が鎖骨に触れ、軽い痛みが走る。彼は首を噛んだのだ、吸血鬼でもないのに。
「ええ――そ、そこ、め、目立つ…」
「俺は昨日しましたって、印」
「ちょ、ちょ…ちょっ……――」
彼は俺の首筋に痕を残すと、それで満足したのか首筋から離れ、俺のTシャツをまくり上げ、今度は手で弄っていた小さな突起に舌を這わせる。
「あ、あああ…ん、ん、あああ…」
俺の指先が空を掴むように彷徨う。官能的な刺激に耐えられず、俺は首を何度も振る。気が付けば、俺が彼にしがみついていた。
「ここ、気持ちいいんだな。ここもっと欲しいんだろ」
俺は身体を弓なりに反らせ、甘い蜜に耐える。
「もっと鳴けよ、七瀬。可愛い声聞かせろ」
俺は目を潤ませて、彼の背中に爪を立てる。最近はベッドの上で泣いてばかりだ。
「あ…、ああん、…ん、んん…、あああ…」
俺の甲高い声が彼の欲を煽るのか、彼の動きが激しくなる。ねっとりと胸の突起を吸ったり、舌で転がしたりし、片方の手は短パンの中、いや下着の中まで入れられ、俺自身を触る。どんどん俺自身は固くなり膨張していく。
「お前をこんなに溶けさせてるのは誰?言ってみろよ」
「しゅ…しゅ…柊一さ…ん…」
「聞こえない。ちゃんと言わないと止めるぞ」
「…だ、だめ…やめないで…柊一…さん…」
「よく言えました。…本当に可愛いなお前、明日その首筋の痕を見られるのが楽しみだな」
「いじ…わる…」
俺は身体を震わせる。
「可愛すぎ、七瀬」
彼は俺のモノを持つと根元から先の方まで入念に擦り、情欲を煽り立てる。ギシギシというベッドの音。キングサイズのダブルベッドとはいえ、男二人が寝て行為に及んでいるのだ、ベッドが軋む音を出すのも仕方がない。
「う、う…う…あ…んあああん…」
「七瀬、もっと声出せよ。気持ちよくないのか」
「き……きもち……いい…」
エスカレートしていく淫靡な行為、とうとう俺の短パンが彼の手で下着ごと脱がされる。俺のペニスは先走って液体が漏れ、彼の手を濡らしている。そのまま刺激が続くのかと思ったが、彼は身体を俺の下肢の方に行き、俺のペニスを片手で掴み、口に含む。
「あ…あああ…う、ぁあああん…あああ」
俺はシーツを掴みながら、喘ぐ。クチュクチュと卑猥な音が耳を犯す。彼は唾液を塗りながら、男根を揉みしだく。
「ううう…、うあ、ああ…」
彼は、手のひらと指先を使って、上下ゆっくりと動かし、男性器と睾丸の両方に刺激を与えてくる。蜜の味が濃くなる。俺はただ欲に任せて声を上げるだけだった。
「もっと欲しいか、ここ気持ちいいだろ」
「う…、ああ…うん…気持ち…い…い…」
柊一さんは吸い込むように男根を咥えると、一番敏感な先端部を舌で舐めまわす。俺は身体を震わせ、全身で甘美を味わう。
「あああ……い、イっちゃう……ああ……あん…イっちゃう…」
俺の声が聞こえたのか、彼は舌の動きを早めていく。
「い、い、イっちゃう…あんああ…だめ…い…イっちゃう…」
俺は彼に陰茎を上下に擦られ、先端を舐められ、腰が動く。
「七瀬。もう我慢できないだろ。好きに鳴けよ」
俺の声が少し掠れる。雄の欲に踊らされて、頭が真っ白になっていく。
「ああ、あああ…アアアア…!!」
「ご、ごめん…柊一さん…!お、俺…」
俺の白濁した液体を彼が顔面で受ける。彼の綺麗な顔は俺の射出した白濁まみれの顔になる。
「いい。気にするな。洗えば済むことだ」
彼は少し寝室にあったティッシュで拭くが、そのまま寝室を出て行った。
人によっては顔面発射って興奮するというけれど、俺はとてもそんな気持ちになれなかった。綺麗なものを汚した感じで申し訳なさが先に立つ。
でも。
すっきりした。柊一さんのおかげで深く眠れそうだ。燻っていた熱を一気に放出したからか。今日一日何回したんだろう、俺はカウントするのが恥ずかしくなった。
気になるのは首のあたりの柊一さんの噛んだ痕。見つからないように襟でも立てて行こうか。余計怪しまれるか。
俺の部署には女性社員も居る。こういう事に敏感な娘がいてもおかしくない。騒がれるのも嫌だ。誰にも気づかれないことを祈るばかりだ。
「なんだ、七瀬もう寝たのか?」
彼が戻ってきたみたいだ。俺は潜り込んだタオルケットから顔を出す。
「まだ起きてるよ。それよりさっきごめんね…俺の所為で顔汚しちゃって」
「気にするなと言ったろ。これで悦に入るヤツもいるが、お前は違うんだな」
「俺は違うよ。柊一さんの綺麗な顔にぶっかけちゃって申し訳なくって…――」
柊一さんは俺の髪を撫でる。
「七瀬は七瀬だな」
柊一さんが俺を柔らかい眼差しで見つめてる。俺も黙って彼と視線を絡ませた。
「明日楽しみだな。『昨日やりました』痕どうなるだろうな」
俺はむくれる。
「噂になったらどうするのさー!それじゃなくてもうちの部署女子社員いるんだけど」
「相手が俺だとは夢にも思わないだろ。七瀬に架空の彼女が出来るだけで」
「それが面倒なんだよ~!尾びれ背びれついて騒ぎにならなきゃいいけど」
「面白そ。七瀬にどんな架空の彼女ができるんだか楽しみだ」
他人事だと思って柊一さんは楽しそうだ。俺は軽く頭が痛くなった。
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