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【番外編】静寂の宿で、君という傑作を読み解く10
「……どうした、そんなに泣いて。どこか痛いか?」
「いたく、ない……っ、ちがう……っ。しゅう、いちさん、がいじわる、するから……っ」
必死に涙を堪えながら、潤んだ瞳で柊一を睨みつけようとするが、滲む快感のせいで甘ったれた睨み方にしかならない。震える両手で彼の強靭な腕を押し返そうとするものの、与えられた快楽で全く力が入らず、むしろ自分から縋りついているようなみっともない格好になってしまう。
「え?俺はいじわるなんてしてない。こうして優しく撫でてるだけ……それとも、もっと『違うこと』してほしいのか?」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で、ただ本能のまま俺は懇願の声を絞り出す。
「あ……っ、それ……!じらさないで、おれ、頭わるいから……言葉で言われても、わかんない、おねがい、はやく、して……っ」
これ以上ないほどに無様で、惨めな姿。俺のプライドも何も欠片さえ残ってない。これ以上、柊一さんが操る巧みな言葉の罠に翻弄されたら、本当に頭がおかしくなってしまう。
しゃくり上げるたびに小さく跳ねる俺の背中を、彼は酷く冷徹で、それでいて狂おしい熱を孕んだ瞳で見下ろしている。
ゆっくりと、俺の腰を掴む柊一さんの大きな手に力がこもる。シーツを掴む俺の指先は、ただ彼の与えてくれる衝撃を待ち侘びるように細かく震えている。
「はやくって、何を?ちゃんと俺にも分かるように、言葉にして教えてくれないと、次に進められないなあ」
低く愉しげな笑みを含んだ声で、俺の耳元を熱い吐息でなぞるように囁く。焦らすように動きをピタリと止め、意地悪な愉悦を滲ませた瞳で、涙目の俺の顔を上からじっと見下ろしてくる。
「……しゅういちさんの、おっきいの、中、いれて……っ、おれ、しゅういちさんので、めちゃくちゃにされたい……っ!あん、ぁ、もう、がまんできない、しゅういち、さん……ッ!!」
「あのな、お前マジでいい加減にしろって。そんな顔で泣きながら縋り付かれたら、手加減なんかできるわけねぇだろ」
低く掠れた声が降ってきたかと思うと、柊一さんの大きな手が、俺の両手首を容赦なく扱う。シーツに沈み込む俺の身体を、彼の細身で圧倒的な体躯が完全に覆い隠す。
「しゅう、いち……っ、さ……!」
いつの間にか用意していた冷たいローションを容赦なく注ぎ込まれ、指で徹底的に解きほぐされた奥が、熱い疼きを上げて彼の質量を求め始める。じれったい焦らしに耐えかねた俺が、涙目で「おねがい……」と縋りつくと、柊一さんは低く獰猛な笑みを漏らす。
「……待てねぇのか?七瀬」
次の瞬間、限界まで昂ぶった彼の凶器が、溢れる潤滑液を割り裂いて一気に最奥まで突き刺さる。
「ひゃ、ああああーーーーッ!?しゅう、いち、さ……ッ!!」
言葉にならない悲鳴が頭のてっぺんから突き抜け、あまりの質量に身体が弓なりに跳ね上がった。息を整える隙すら与えず、柊一さんは俺の腰をガチリと両手で掴み固定すると、シーツに擦れるほど激しく、深く、その剛躯を打ち付け始める。
「くぅ、あッ、あ、あっ……っ!これ、無理……っ」
限界まで張り詰めた快感の波が容赦なく押し寄せ、思考がどんどん真っ白に塗り潰されていく。俺は涙でまみれた顔を枕に埋め、これ以上ないほどに無様で甲高くて甘い悲鳴を上げた。
「……っは、あ、ぁ……っ!」
激しい絶頂の余韻に身体をビクビクと震わせ、俺は完全に力を失ってシーツに頽 れた。頭が真っ白のまま、ハァハァと荒い呼吸を繰り返す。自分が先に果ててしまった気まずさと、味わったことのない快感の凄まじさに、涙が溢れて止まらない。
しかし、そんな俺の腰を掴む柊一さんの手の力は、全然緩んでいなかった。寧ろ、俺の身体の奥に埋め込まれたままの彼の質量は、先ほどよりもさらに熱く、猛々しく膨れ上がっている。
「はぁ、っ、しゅう、いち、さん……おれ、もう……っ」
かすれた声で振り返ろうとした俺の腰を、彼は容赦なく、さらに深いところまでグッと突き上げて固定した。
「……お前だけ先にイって、終わりなわけねぇだろ」
低く掠れた声が、冷徹で、それでいてひどく飢えた熱を孕んで鼓膜を震わせる。
「っひゃあッ!?あ、あぁっ……!」
容赦のない衝撃が再び内側を穿ち、果てたばかりの敏感な粘膜が悲鳴を上げる。一度目の絶頂で完全に弛緩しきった奥は、逃げることもできずに彼の凶暴な動きをすべて素直に受け止めてしまう。
「しゅういち、さんっ、だめ、もう、壊れちゃ…う…っ!」
「悪い…七瀬。俺はまだ全然足りてねぇんだよ…」
俺の背中に覆いかぶさり、柊一さんは容赦なく腰を打ち付け続ける。彼は自分の欲のままに、どこまでも貪り、限界まで暴きつくそうとしていた。
「っは、あ……ッ、七瀬……っ!」
何度目かも分からない、俺を壊すような狂おしい快感の果て。
背中を軋ませて強く俺を抱きすくめた柊一さんが、ひときわ深く突き入れたまま、ついにその剛躯を大きく震わせた。
熱いものが、身体の奥底へと容赦なく注ぎ込まれていく。
ドクドクと脈打つ彼の質量をダイレクトに感じながら、俺は真っ白になっていく意識の中、ようやく柊一さんも気持ちよくなってくれたのだと、安堵に似た心地よさに包まれた。
「はぁ、は……、しゅう、いち、さん……っ」
シーツに顔を埋めたまま、荒い息を繰り返す。
彼に何度も何度も限界までイカされ続けた身体は、もう指先一つ動かす力すら残ってはいなかった。
体力だけが自慢だった俺が最後まで何もできずにいた。
(……終わりかな)
激しいピストンが止まり、静寂な部屋の中、お互いの荒い呼吸の音と吐息だけが響いている。
俺の片想いの苦しさを一瞬だけ忘れさせてくれる。酷く甘くて凄絶な夜の余韻が、涙で濡れた俺の肌をじりじりと侵食していく。
(期待しちゃダメ…期待しちゃダメ…俺なんかが期待しちゃダメ…)
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